漫画家・東村アキコ「加藤シゲアキの新作小説は世界観が抜群にセンスいい!」
小説家・加藤シゲアキが、サラリーマンが主人公のミステリーに挑んだ4作目の長編『チュベローズで待ってる』が好評発売中だ。加藤と親交があり、今まで発表してきた小説はすべて読んでいると語る漫画家の東村アキコ氏も「ずっしり重たい読み応えで、デビューの頃からさらに深く、濃くなっています」と太鼓判を押す。
異業種の2人が初めて出会ったのは、アイドル雑誌の連載企画。レポートマンガを描くためNEWSの撮影に立ち会った東村氏だが、最初の頃は「目も合わせてくれなかった(笑)」という。
「休憩中も、シゲは寡黙でシャイな印象でしたね。あるとき、映画だかドラマだかの監督さんに、私の『主に泣いてます』を勧められたらしいんですよ。で、『僕、このマンガを読めって言われたんですよ』って。そこで周りが一斉に『それ、いつも撮影現場に来てるジャージの漫画家さんのじゃん!』と突っ込んだとか。それからようやく、“謎の漫画家”ではなくちゃんとした漫画家として認識してもらえるようになったんです。その後、シゲは小説を書きはじめて、そこで初めて人見知りだった理由がわかった気がしました。ああ、文化会系男子だったんだなって」
徐々に打ち解けあううち、こんなメールが届いたこともあった。
「『小説の打ち合わせで編集さんに会うことになったんですけど、初めてで何をしゃべっていいのかわからないのでついてきて下さい』って。『わかった。じゃあついていくよ』と、保護者みたいな感じでついていったんです」
物語を創る人間どうし、感想やアドバイスを求められたことは?
「あったかなぁ? それより、『どうやって時間をひねりだしているのか?』という話になることが多いです。私はジャニーズのタレントさんがいかに激務か知っているので、シゲがそれをこなしつつ小説を書く時間を作れているってことが不思議でしょうがなくて。一度、『なんで小説書こうと思ったん?』って聞いてみたんですよ。そうしたら開口一番、『自分がやりたいことをやることで、NEWSというグループが活気づけばいい』って。普通、そんな言葉が出てくると思わないじゃないですか。『小説家に憧れて』とか『一発あてて印税を稼ぎたい』ならわかりますけど。めっちゃ感動しましたね」
主人公の光太が就活に失敗し、全く縁のなかったホストの世界へ飛び込むところから始まる『チュベローズで待ってる』。上巻(AGE22)、下巻(AGE32)とテイストの違うスリリングな展開で物語を引っ張り、予想もつかない場所へ着地する本作を、東村氏はこう読む。
「ちゃんとミステリーだし、文学ですよね。私自身、中学生の頃にいとこのお兄ちゃんの本棚にある大人っぽい小説を読んで本が好きになったので、シゲのファンの子がこれからこの小説を読んでどんな感想を持つのかも興味深いです。この作品をきっかけに小説を読み始める子がいるのかと思うと、シゲのやっていることって偉業ですよね。就活に失敗してホストになるっていう設定も面白い。パクりたいですね(笑)。あと、チュベローズって花を知らなかったことも悔しいです。たいていの花の名前は知っていると思ってたんだけど。こっちも使いたい!」
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『チュベローズで待ってる AGE22』 歌舞伎町の夜に交わる男と女のミステリー巨編 |
『チュベローズで待ってる AGE32』 すべてを覆す愛と衝撃のラストシーンに驚嘆 |
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