北朝鮮が大量に偽造した「’92年製100ドル紙幣」の闇
歴史的な米朝首脳会談でアメリカと北朝鮮の間に雪解けムードが漂っている。だが北朝鮮といえば長年、偽札作りを国家事業とし、アメリカを翻弄してきた過去を持つ。そこで今回は、経済ヤクザとして海を渡って活動してきた猫組長が見た「米朝偽札戦争」の一端を紹介しよう。
ラオスの首都・ヴィエンチャンからタイ国境までバスで約30分。タラートサオのバス乗り場には屋台が連なり、人やバイクが喧騒の中で交錯している。
フランスパンを山積みにして売る屋台が多く、この国がかつてフランスの植民地であったことを思い出す。
国境を越えるためのインターナショナルバスは大型で、タイのナンバープレートが付いていた。1日6便運行されているそのバスは、どの便もほぼ満席になるようだ。
黄色い僧服を身に纏った集団やバックパッカーの欧米人に交じり、地元の行商人も多い。料金は日本円で約300円。国境を越えるため、パスポートによる乗客の管理も一応行われている。
土埃を巻き上げたバスがけたたましくクラクションを鳴らすと、あっという間にタイとの国境検問所へ到着した。ここで乗客は全員バスを降りてイミグレーションへ向かう。バスはそのままラオス側の検問所を抜け、タイ側の検問所で乗客を待つ。
出国審査を受ける乗客は、荷物をバスに預けたままの者も多いが、特に荷物検査があるわけでもない。
私はヴァンビエンという街から一緒だった、韓国系の男性2人の後ろに並んだ。彼らの持つヴィトンのボストンバッグにはスーパーノートと呼ばれる、偽100ドル札が詰まっているのだ。
スーパーノートは北朝鮮が偽造する最も精巧な100ドル紙幣で、世界中に流通している。
理由はわからないが、’92年に発行された紙幣番号の100ドル札が特に多く流通している。事態を重く見たアメリカ政府は、真正な一部の’92年製100ドル紙幣を無効にしたほどである。
この’92年製100ドル偽造紙幣が大量に出回ったのは、’01年に起きたニューヨーク同時多発テロの直後だ。
突如、香港の金融機関で大量に出回るようになり大騒ぎになった。その後、ウイルスが伝播するように東南アジアへ広まっていったのである。
偽ヴィトンのボストンバッグに大量の偽100ドル札が
北朝鮮製の偽100ドル紙幣「スーパーノート」が世界中に流通
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『猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言』 週刊SPA!誌上で始まった「ネコノミクス宣言」を大幅に加筆・修正、連載開始から2年の時を経て単行本として出版されることとなった渾身の意欲作。相方を務める漫画家・西原理恵子氏による描きおろし漫画も収録、300ページ近いボリュームでお届けする。 |
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