ヤクザの厳しいお中元事情「タオルに洗剤…今や一般家庭並みのショボさ」
日頃の感謝を込めたお中元。会社や自宅にはポツリポツリと届き始めている頃。とはいえ、不景気な昨今では減りつつもあるだろう。では、義理や人情にうるさいヤクザの場合はどうなのか。
昨年夏、明太子の缶詰がお中元に送られてきたと激怒し、送り主である男性を脅迫した暴力団員が逮捕された福岡県。その福岡県内の某市に事務所を抱える零細暴力団組事務所にも、今年もお中元の季節がやってきた。さぞ豪華な品が届くのかと思いきや……。
「兄さん、今年は……かつお節パックです」
「そうや……××んとこはどげんか?」
「××さんは……ハァ、まだ届いとらんごたるですね……」
「そうや……」
集まりは以前のそれと比べれば大変悪く、暴力団排除条例が施行されてからというもの、お中元や年始の挨拶どころか、電話しても無視されるようになったかつての「お得意先」は数百件を数える。お付き合いをしていた半数以上の個人や法人から、あっさり縁切りされた。
「昔はよかったとですよ……。お中元やお歳暮ていうたら、冠婚葬祭に次ぐヤクザにとってのビッグイベント。何しろ“義理事”ですもんね。高かスイカば何十個とか、初採れのナシやら巨峰やら、佐賀牛の“よかところ”やら、もちろん明太子もありましたよ。稚加栄(博多の有名料亭)のよかヤツです。スーパーで売っとるごたるやつじゃなかです。事務所のボウヤに持たせたり、みんなでバーベキューしたり。あげんこと(ああいうこと)はもうでけん(出来ない)でしょう」
遠い目をしてそう話す組幹部(60代)だが、確かに無理もないだろう。今年届いたお中元といえば、ゼリーや果実ジュースの詰め合わせ、ハンドタオルセットに洗剤と、平凡な一般家庭に届くものと何ら変わりない。情けないのは、そんな“しょぼい”お中元の品々を、若い連中だけでなく、中堅幹部組員ですら、自宅で待つ女房や子ども、家族のためにと競い合って持ち帰る様子を目の当たりにすることだ。
「若っかもん(若い衆)に持たせんか! と怒鳴るとですよ。こげん情けなかことはなか。我々は暴力団やし、みんなが付き合いたくないと思うのもわかるとですよ。でも、我々がおらな(いないと)仕切れんことだっていろいろある。地区の祭りだってそう、選挙もそう、みんなあげん(あんなに)我々ば頼って、こっちも一生懸命にやってきたのに……。安かタオルなんか送り付けてきてから“くらわすぞ(叩くぞ)”と内心思うとりますよ」
ヤクザの厳しいお中元事情「今や一般家庭と変わらない」
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