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「自動運転の本格普及は商用車から」の理由 2025年までに段階的に実用化

「自動運転」というフレーズが珍しくない昨今。と同時に「どうせ、〇〇限定とか条件つきでしょ?」など、世間のイメージと実態の乖離にガッカリすることもしばしば。我々がイメージする自動運転車とは、「行き先を設定すれば、あとはクルマが目的地まで安全に運んでくれる」というもの。そんな“真の自動運転車”はいつになったら登場するのか? オートクラブ西村直人=文 Text by Nishimura Naoto

誇大表現一切なし。運転手不要の“真の自動運転車”はいつ乗れるのか?

 ここ数年、「自動運転」というキーワードを見聞きしない日はない。正式名称を「自律自動運転技術」(以下、自動運転技術)というこの技術だが、実は「本格普及するのは商用車から」だと聞いたら少し驚くだろうか?  正確には、乗用車も商用車も自動運転に必要な基本的な技術は同じ。ただ、乗用車と比べて商用車は、走行する場所を限定しやすいという特徴があるため、自動運転技術を搭載した車両の普及は商用車が先になる。とりわけ大型トラックの場合は、都市間輸送として主に高速道路を走行することが多い。ざっくり言って、国内の大型トラックの走行は約60%が高速道路だ。  高速道路には歩行者がおらず、丁字路(現在はT字路とも言う)などからの飛び出しがないことから自動走行状態を保ちやすいという利点があるのだ。
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’15年、メルセデス・ベンツは自律自動運転技術を搭載した「F015 Luxury in Motion」

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ダイムラーグループの北米トラック部門Freightliner Trucksは「Inspiration Truck」を発表(無人走行可)

 もちろん日本政府も普及を後押しする。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムのなかで自動運転を担当するSIP-adus(自動走行システム)では、自動運転技術の導入プランを、次の3つに絞り込んだ。 ①自家用車(乗用車) ②物流サービス(商用車) ③移動サービス(Mobility as a Service、通称MaaS)  このなかで法的整備を含めて普及が最初に見込めるのが②で、このカテゴリーに属する大型トラックの場合、’25年までには高速道路での隊列走行を可能とし、同時にそれに必要な法整備も目指すという。隊列走行とはカルガモ走行とも呼ばれるもので、先頭車両にのみドライバーがいて運転操作を行うと、5G相当の高速通信回線でつながった後続車とそのまた後続車は無人、つまりドライバーレスで先頭車両に追従する自動走行状態が保てるというもの。ここではアクセル&ブレーキだけでなくステアリングも一定の範囲内で自動制御される。  一方、①についても開発は急ピッチで進む。各国の自動車メーカーから毎日のように新情報が発信されているので、「明日にも手放し運転可能では?」と思ってしまうが、乗用車は販売台数が多いことに加えて、混雑した都市部や曲がりくねった郊外路のほか、歩行者や自転車の認識も行い緻密な制御をしなければならない。越えなければならない技術的なハードルは大型トラックよりもうんと高い。  法的整備にしても責任問題はじめ、議論が始まったばかりだ。
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フォルクスワーゲンの自動運転技術
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