DV加害者に30~40代が多いワケ。止まらない暴力の連鎖
日刊SPA!では先日、「DV加害者の特徴」を掲載。「モテる男が多い」「リーダーシップのとれる性格」等、専門家の解説を元に紹介した。
今回も、これまで多くのDV加害者たちと接してきた「NPO法人 女性・人権支援センター ステップ」の栗原加代美さんに、加害者たちの更生方法から暴力文化の連鎖について語ってもらう。
栗原さんの元を訪れる6割の男性は、「妻に逃げられたことが原因」と前回の記事で言及したが、なぜ加害者は妻を迎えに行くのではなく、彼女の元へ足を運ぶのだろうか。
「6割の方のほとんどはある日家に帰ると、妻も子供も、そして荷物もなくなっている。あるのは書き置きだけで、『ここに電話してください』と。それが私の電話番号で…という理由で、私のプログラムへ参加を決めることが多いのです」
夫の元から逃げた妻が電話番号を書き残すことに驚くが、そうして栗原さんのプログラムに来た男性たちは、自分が悪いという罪悪感は持ち合わせていないように感じる。果たしてそれは偏見だろうか。
「いえ、その通りで、やはり自らのことを悪いと思われていない方が多いです。『自分は被害者だ』の意識。『妻が僕をあんなに怒らせるから悪いんだ』『僕が被害者であることを証明しにきた』といった具合です」
そのような加害者たちに、どのような指導をし更生を促すのかを尋ねると、1枚の紙、そしてとある図を見せてくれた。
「1回目の面談で、あるチェックリストを使います。身体的暴力、精神的暴力、金銭的暴力などの項目があるのですが、それを使って自分が加害者であると気が付いてもうらう方法ですね。もう一つは、2枚の絵を見せ、『どちらがいい夫婦』だと思うかを聞きます」
どちらも男女が車に乗っている絵だが、1枚は男女が一緒に乗っており、もう1枚は別々に乗っている。一見すると共に乗る関係が理想的に思うのだが、栗原さんは「実は違うんです」と言う。
「これは人生を車に例えています。一緒に乗る絵を選んだ方は『夫婦は一緒の価値観を持って進んでいかなければならない』といった思考を持っていることが多い。でも、それは違います。
夫婦であってもそれぞれの人生は自分で道を選択できます。しっかりと境界線を引く必要がある。DV関係に陥っている夫婦は『すべての決定権を加害者が持っている』思考。境界線を越えて、妻の人生に入り込む夫が圧倒的です。それを説明すると、『僕の考えはDVなんですね』と言ってくれる。それを一度目の面談でしっかりと伝える必要があります」
とはいえ、妻に逃げられ、憤慨している状態の加害者も少なくないと思うのだが、すぐに納得してくれるのか疑問に感じる。
「彼らは『自分が正しい』といった思考に陥っている状態なのですが、それで妻に逃げられどうしようもなくなっています。『自分は正しくなかった』と証明されているようなものですよね。なので、『あなたは正しくなかったんですよ』としっかり伝えれば、変わっていくようになるんです」
人の思考はそう易々と変えられるものではないだろう。だが、当人にとって緊急事態ともいうべき事象まで発展することで、問題は解決への道に向かうのかもしれない。
被害者意識を持つ加害者たちは境界線を越えている
自分が正しいを改めることが大切
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