新国立競技場の残念な真実。観にくい座席、作業員の過労死も…
ようやく完成した新国立競技場だが、来場者からは、クソスタジアムとまで酷評されている。これほどまでに叩かれる理由とは……。
昨年12月21日、まばゆい光に照らされ、神宮の杜で新国立競技場のオープニングイベントが開催されたのである。嵐が歌い、ウサイン・ボルトがトラックを駆けるなど華々しいスタートを切った新国立競技場だが、その裏で一人の若者が犠牲となったことを忘れてはならない。
’17年3月2日、新国立競技場の地盤改良工事に従事していた当時23歳の若者が突如失踪。約1か月後「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」というメモとともに、長野県の山中で自殺しているのが発見された。遺族の代理人を務め、労災認定に尽力した川人博弁護士は、当時の労働状況をこう語る。
「被害者は入社1年目で’16年12月半ばから約2か月半、工事に従事しました。その間は深夜0時に自宅に帰り、朝5時には家を出るという状況でした」
ご存じの通り、新国立競技場は総工費の膨張で旧計画が白紙撤回され、約1年2か月遅れの着工となった。さらに、被害者が従事した地盤改良工事は最も基礎となる工程であったことから作業日程は極めて厳しいものだったという。現場では、こうした長時間労働が蔓延していた。
「東京労働局が調査したところ、競技場の工事に参加する約80社で労働基準法違反がありました。夏には熱中症も出ていた可能性があり、ほかに犠牲者が出てもなんらおかしくない状態でした。隠蔽されているだけで、被害者はいるのかもしれませんが……」
川人弁護士は、異常な労働をさせていた元請けである大成建設や発注元の日本スポーツ振興センター(JSC)に対応を迫った。
「初めはゼネコン側も『下請けの責任』と他人事のようなひどい対応でした。ただ途中からメディアにも取り上げられたからなのか、トーンが変わり、労働環境はその後改善されたと聞いています。しかし、組織委員会やJSCから遺族に対して直接的な謝罪はありません。そもそも無理な工程で始めた彼らの責任は大きいと思います」
現在も新国立競技場は細々とした作業は続いている。従事している30代の作業員はこう話す。
「今は仕上げの段階なので切羽詰まったスケジュールはないです。残業はダメと言われていますが、そもそも残業がない。ただ、土台や基礎工事のときは殺気立っていたという話は聞いていますね」
オリンピックを控え、新国立競技場の完成に浮かれているが、過酷な労働の犠牲の上にあったことを忘れてはならない。
酷評の嵐が吹き荒れる新国立競技場は、本当にひどいのか
『週刊SPA!2/4号(1/28発売)』 表紙の人/ 広瀬アリス 電子雑誌版も発売中! 詳細・購入はこちらから ※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める! |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ