経済はボロボロなのに株価はなぜ高い?コロナ相場の謎にプロが回答
リーマンショックに匹敵する大暴落となった「コロナショック」。二番底を警戒する投資家を尻目に、株式市場は4月以降、謎の株高に沸いている。株式市場に今、何が起こっているのか。
デリバティブ商品開発の第一人者で、「バブルの達人」と称される楽天証券常務執行役員の土居雅紹氏は、現状の相場を『不況下の株高』と表現する。
「3月に暴落があったものの、日本、米国、欧州がそろって大規模な金融緩和に乗り出したことで金融危機は回避されました。実体経済が相当痛んでいることは確かですが、各国の中央銀行がこのまま資金をジャブジャブに放出し続ける限りその運用先は必要で、結果として株式市場にはお金が流入し続けるのです」
2020年1~3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、緊急事態宣言が出る前であるにもかかわらず年率換算で前期比3.4%減に落ち込んでおり、4~6月期はさらに深刻なマイナス成長に陥ることは確実な状況だ。にもかかわらず、日経平均株価は2万円台を回復する堅調な動きを見せているのは、金融緩和の効果に他ならないという。
「コロナウイルスの感染拡大が長期化し、感染の再拡大と移動や外出規制の再強化を繰り返しながら景気は減速していくこともあるでしょうが、先進国の株価は大きく下がることなく堅調に推移する、というのが最も実現可能性が高いシナリオと考えています」(土居氏、以下同)
日本政府は一人10万円の定額給付金や、事業者に最大200万円を支給する持続化給付金など、117兆円の緊急経済対策を実施している。また、国土強靭化を目指す緊急対策としてのインフラ整備予算も通常予算に大幅に上乗せされており、これらの財政出動も株価を下支えする、というのが土居氏の考えだ。同様の状況が続く米国でも、株式市場は堅調に推移し、日本株にマイナス影響を及ぼすことは考えにくいという。
一方で、楽観シナリオもある。このまま感染が収束したり、安価な治療薬やワクチンが早々に普及するようなことがあれば、新型コロナウイルスの脅威はほぼなくなるだろう。もし、このシナリオが実現すればどうなるだろうか。
「直近ではこの2月に高値をつけましたが、中央銀行が市場に放出しているお金は当時よりも今のほうがはるかに大きい。この楽観シナリオが現実になれば、金融緩和に実体経済の回復がついてくるわけですから、株価は2月高値を抜く勢いで急騰することも考えられます」。
状況によっては、「コロナ後のバブル」もあり得るというのだ。
しかし、日本より早く規制緩和した海外では感染再拡大の兆しが見えているうえ、ワクチン製造までには一定の時間を要することを考えると、実現の可能性は低いと考えざるを得ない。こうした楽観シナリオに乗った投資をするのは極めて危険で、むしろ投資家は最悪の事態を想定した「悲観シナリオ」を警戒するべきだと土居氏は言う。
「ウイルスが強毒化して致死率が上昇したり、世界中で感染の第二波、第三波が拡大するような事態になれば、財政が脆弱な新興国の中には耐えきれずに破たんする国が出る可能性も。パニック売りが止まらず二番底をつける、ということも考えられます」
短期収束「楽観シナリオ」の可能性は
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フリーランス記者/ファイナンシャルプランナー。地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネスなど。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿
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