更新日:2020年08月12日 11:23
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コロナ禍でも利益を出す、日本株のロング・ショート戦略とは?

コロナ相場 緊急事態宣言は解除されても、人々の暮らしや経済は依然として「ウィズコロナ」が前提だ。現状の株式市場について、楽天証券常務執行役員の土居雅紹氏は「金融緩和に支えられた『不況下の株高』が続いており、当面はこうした傾向が続くのでは」と予想する。しかし過去の値動きを見る限り、暴落からの回復が比較的早い米国株に比べると日本株のリカバリーは遅い傾向が顕著で、「不況下の株高」に単純に便乗する投資するのは勧めにくいという。  だからといって、日本株投資に勝ち筋がないわけではない。コロナ相場でリスクを抑えながら利益を狙う手法として、土居氏は現物株投資と信用取引を組み合わせた「ロング・ショート戦略」を提案する。 「業績好調な企業を現物で買って、その同業他社から業績が良くない企業を選んで信用売りする方法です。相場が上下どちらに転んでも利益を出しやすく、大きな損失も出しにくくなります」  一般論として上昇局面では買いが儲かり、下落局面は売りで儲かるもの。土居氏の戦略のように売りと買いを両立すると、結局相殺されてプラスマイナスゼロになるように思えるかもしれない。確かに、同じ材料で同じだけ動く企業を組み合わせてしまうとそうなるが、この戦略では「業績好調な企業の買い」と「そうでない企業の売り」を組み合わせることで、利益が出せるしくみになっている。  というのも、上昇相場では業績が良い企業ほど買われて買いの利益が大きくなるが、悪い企業はそこまで上がらないので売りでの損失は限定的となる。逆に下げ相場では業績が悪い企業ほど叩き売られて信用売りの利益が大きくなるが、良い企業の下落幅は比較的小さいため、買いの損失は売りの利益で十分カバーできる。その差分が、利益となって手元に残るというワケだ。

コロナショック下でも30%の利益を出した戦略とは

 実際にこのロング・ショート戦略を、2020年初から「トヨタの買い」と、「日産の売り」をペアにして、仕掛けておいた場合をシミュレーションしてみた。トヨタは言うまでもなく日本の自動車産業をけん引する存在である一方で、日産は元CEOのスキャンダルや業績不振といったネガティブ要因が多かった。  3月の暴落を含むコロナ禍の下落局面では2社とも株価を大きく下げているが、トヨタは最大3割ほどの下落で済んだのに対し、日産は半値以下となる厳しい下げに見舞われた。両社を組み合わせたロング・ショート戦略では、トヨタ買いの損失を日産売りの利益が大きく上回り、投資のパフォーマンスとしては30%程度のプラスになっているのだ。

トヨタ買い×日産売りのロングショート戦略で、コロナ暴落でも30%の利益!

 もちろん、これだけの激しい下落局面なら単純な売りだけのほうが利益は大きくなるが、こうした局面でうまく立ち回るのは容易ではない。多くの投資家が傷を負ったコロナショック下で、保有していたポジションをそのまま持ち続けているだけで、これだけの利益を出せたのは驚きというほかない。  ただ、問題はどの企業を買って、どの企業を売るかという銘柄の組み合わせだ。これは単純に業績が良い企業と悪い企業を組み合わせればいいというものではなく、なんらかの材料が出た時に同じ方向の値動きをするのが重要だ。そのため同業他社同士であることが最も望ましいが、うまいペアが見つからない場合はどちらかを東証株価指数(TOPIX)などに連動するETFにしてもよいという。指数と組み合わせる場合、個別銘柄は大型株であるほど指数と連動しやすいので適している。  このロング・ショート戦略のポイントは、買いと売りの金額をなるべく同程度になるよう調節することだ。また、投資期間は数週間から数か月に及ぶこともあるので、売りはなるべく無期限の一般信用銘柄を選びたい。  上にも下にも激しく動く、不確実でボラティリティの高い相場では、どっちに転んでも利益を出しやすいロング・ショート戦略は有効な投資術のひとつになるだろう。「不況下の株高」に便乗しながらも、感染の第二波や株式市場の「二番底」にも備える投資術として検討の価値はありそうだ。<取材・文/森田悦子>
フリーランス記者/ファイナンシャルプランナー。地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネスなど。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿
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