更新日:2020年11月27日 10:05
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儲けのシグナルは“ニュースの本質”から見つけられる/経済評論家・上念司

コロナ禍の経済悲観論について

 コロナ禍の影響で、多くの企業でボーナス削減や大規模なリストラ、組織改編などが行われている。こうしたニュースに悲観的になってしまう人も多いだろうが、ベストセラー『経済で読み解く日本史』シリーズの著者で経済評論家の上念司氏は、「こうしたピンチの時こそ、世の中の流れを見抜き、正しい情報を得ることが肝心だ」と説く。
上念司

上念司氏

 たとえば、今から約30年前。日米貿易交渉による牛肉とオレンジの輸入自由化が開始された際、大手マスコミは国内の牛肉とみかん消費が大きく打撃を受けると報道。それを受けて、多くの畜産業者とみかん農家が廃業の一途を辿った。  いざ自由化が始まると、牛肉業者に関しては、報道とは全く逆の現象が。国産の牛肉全体の消費が増え、なおかつ生き残った畜産業者の所得が増えるという事態に発展したのだ。一方で、みかん農家の場合は衰退の一歩を辿ることに。  しかし、実は、当時はすでにみかんの需要は減少しており、市場は飽和状態にあった。みかんの国内生産の市場が縮小に向かった要因は、貿易自由化ではなく、そのビジネスモデルがすでに破綻していた結果に過ぎなかったのだと上念氏は指摘する。  国内で畜産業を続けた人々が、報道を鵜呑みにしなかったがゆえに大きな利益を手にしたように、儲けを得るには、ニュースの本質を見抜く必要がある。そこで、上念氏に、「ビジネスチャンスをつかむための正しい情報の見極め方」について解説してもらった。(以下は、上念司著『誰も教えてくれなかった 金持ちになるための濃ゆい理論』の一部を編集したものです)

儲けのシグナルはたくさん出ているのに、多くの人は気づかない

 牛肉とオレンジの輸入自由化にまつわる事件が私たちに示唆することはなんでしょう。それは世の中には「流れ」があるということです。そして、どんなに力がある人でも、流れに逆らっても逆らいきれるものではありません。さらに、この流れはある日突然変わります。いや、本当は流れが変わりそうなシグナルはいろいろなところに出ているのですが、大量のノイズに交じっているため多くの人が気付かないのです。  また、ある政策に対して肯定的な情報と否定的な情報が入り混じって判断に困るケースも多々あります。そんな相反する二つの主張のうちどちらが正しいかを見分けるためには、「一人ディベート」が役に立ちます。ディベートの良いところは、与えられた論題に対して、自分の考えに関係なくくじ引きで肯定、否定の立場が決まることです。  例えば、「日本は日米安保条約を廃止すべし」という論題に対して、くじ引きで「安保継続」側になったとしたら、自分自身が安保廃止論じゃであったとしても、「日本安保は必要だ、廃止すべきでない」と反対の主張をしなければならないのです。

自分と正反対の立場に立つことで、ノイズを消す

 普段私たちが何の気なしに生きていると、自分と正反対の立場に立って徹底的にロジックを組み立てて論争することはまずありません。私はデフレ脱却の必要性を著作などで説いていますが、同じぐらい労力をかけて「デフレ継続」を訴えたり、ましてそれを書籍化したりすることはありません。  ところが、ディベートの場合、くじ引きによって「デフレ継続」側に無理やり立たされたら、それに合わせてリサーチし、データを集めて解釈し、最終的には立論として文章にまとめなければいけません。ディベートでもなければこんなことは絶対にあり得ない話です。  しかし、敢えて自分の主張と反対の立場を取って、その主張の根拠となる資料のリサーチなどを行うと、相手がそういう主張をする理由は背後にある利害関係など、自分では考えもつかなかったことがいろいろ分かるようになります。また、自分に反対する人間がどのような疑問、質問を投げかけてくるか、あらかじめ反論を想定できるようにもなります。  ディベートにおける「敢えて自分の考えとは反対の立場を取る」という技術を応用すれば、世の中に出回る書籍やマスコミ報道などが本当に正しいのかどうかを検証することができます。独語感銘を受けた主張などに対して、自分自身で敢えて否定側に立って反論してみるわけです。
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「頭のいい人」や「みんな」の言葉はノイズ
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1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中

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