IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長がオリンピック開幕前の7月14日、菅首相との会談で「我々が日本国内にリスクを持ち込むことは絶対にない」と語った。さらにバッハ会長は、首相会談直後の囲み取材でプレイブック(ルールブック、感染対策指針)違反の報道について問われても「報告は届いていない」と答えた。このことが「まったく事実と違う」と、オリンピック開幕後も批判され続けている。
翌15日、バッハ会長を直撃するチャンスがやってきた。都庁での小池百合子知事会談の冒頭が報道陣に公開されることになったのだ。ただし取材可能なのは小池知事らに挨拶するまでの15分間で、質疑応答の時間はなし。会談後の囲み取材も予定されていなかった。
来日して以降、バッハ会長は一方的に発言するばかりだった。記者クラブ所属の記者にはわずかながら質問の機会があったものの、筆者のようなフリーランスの記者にはまったく質問の機会が与えられてこなかった。そこで、バッハ会長から69歳の誕生日を祝う花束を受け取った小池知事が記念撮影を始めたタイミングで、筆者は大声を張り上げたのだ。
「President Bach! You are liar! Airport is dangerous! Bubble is broken!」
(バッハ会長、あなたはウソつきだ! 空港は危険だ! バブル方式は破綻している!)
この後も「あなたは“平和の使者”ではない。五輪(強行による感染拡大)で多くの日本人が亡くなるかも知れない。空港で案内役の女性スタッフはワクチン未接種で感染の恐怖に脅えていた」と続けようとした。しかし、すぐに都庁職員に腕をつかまれて強制退場させられてしまった。
小池知事に対しても「バッハ会長を追及しないのですか。羽田空港の水際対策はザルです。都民の命は二の次なのですか?」という声掛け内容を用意(メモ書き)していたが、質問を発する機会を奪われてしまった。