更新日:2021年07月29日 12:06
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「バッハ会長、あなたはウソつきだ」本人を直撃した記者が伝えたかったこと

「バッハ会長、あなたはウソつきだ!」と叫んで会場からつまみ出される

東京都庁を表敬訪問したバッハ会長(右)から花束を受け取る小池百合子・東京都知事(左)

東京都庁を表敬訪問したバッハ会長(右)から花束を受け取る小池百合子・東京都知事(左)

 IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長がオリンピック開幕前の7月14日、菅首相との会談で「我々が日本国内にリスクを持ち込むことは絶対にない」と語った。さらにバッハ会長は、首相会談直後の囲み取材でプレイブック(ルールブック、感染対策指針)違反の報道について問われても「報告は届いていない」と答えた。このことが「まったく事実と違う」と、オリンピック開幕後も批判され続けている。  翌15日、バッハ会長を直撃するチャンスがやってきた。都庁での小池百合子知事会談の冒頭が報道陣に公開されることになったのだ。ただし取材可能なのは小池知事らに挨拶するまでの15分間で、質疑応答の時間はなし。会談後の囲み取材も予定されていなかった。  来日して以降、バッハ会長は一方的に発言するばかりだった。記者クラブ所属の記者にはわずかながら質問の機会があったものの、筆者のようなフリーランスの記者にはまったく質問の機会が与えられてこなかった。そこで、バッハ会長から69歳の誕生日を祝う花束を受け取った小池知事が記念撮影を始めたタイミングで、筆者は大声を張り上げたのだ。 「President Bach! You are liar! Airport is dangerous! Bubble is broken!」 (バッハ会長、あなたはウソつきだ! 空港は危険だ! バブル方式は破綻している!)  この後も「あなたは“平和の使者”ではない。五輪(強行による感染拡大)で多くの日本人が亡くなるかも知れない。空港で案内役の女性スタッフはワクチン未接種で感染の恐怖に脅えていた」と続けようとした。しかし、すぐに都庁職員に腕をつかまれて強制退場させられてしまった。  小池知事に対しても「バッハ会長を追及しないのですか。羽田空港の水際対策はザルです。都民の命は二の次なのですか?」という声掛け内容を用意(メモ書き)していたが、質問を発する機会を奪われてしまった。

筆者は「報道陣にまぎれた男」「自称ジャーナリスト」と報道された

 なお都庁報道課は「ハフポスト日本版」の取材に対して「取材活動は構わないが、(筆者がしたような)運営に支障が出る行為は困ります」と説明している。しかし、写真撮影自体が困難になったわけでも、続く冒頭挨拶に支障が生じたわけでもない。むしろ、「プレイブックが守られていない」ということについては、オリンピックを都民の命を守る責任がある小池知事が追及するべきことであったとも言える。  バッハ会長は筆者の直撃に対して平然としていた。「申し訳ないが、何を言っているのか理解できない。言いたいことがあったら書いて渡して下さい」と述べるだけだった。  バッハ会長への声掛けを含む面談の様子は実況中継(生放送)され、複数のテレビ局が録画映像としても流したが、筆者の声掛けの目的を紹介するメデイアは皆無に等しく、「男性乱入」と不審者が紛れ込んだかのような印象を与える記事が少なくなかった。  例えば、15日の『デイリースポーツ』が「『お前は嘘つき! 空港は危険だ』叫び強制退場」という見出しで「報道陣にまぎれた男」が叫んだと報じると、『スポーツニッポン』も「IOCバッハ会長に『おまえは嘘つきだ!』男が叫び強制退場」と銘打って「ジャーナリストと称する1人の男性」が強制退場されたと伝えた。  さらにはテレビ朝日も「自称・ジャーナリストの男性」と紹介するなど、速報として伝えたメディアの中で、筆者に声掛けの理由を直に聞いたり「フリージャーナリスト」という肩書で以前から取材活動を行っていることを確認したりする記者はいなかった。
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羽田空港では、五輪関係者の動線は完全に分けられていなかった
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ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』

選挙や五輪を優先して、コロナ感染爆発を招いた小池百合子東京都知事。 都民のためでも、国民のためでもない、すべては「自分ファースト」だ!

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