航空機内のマスク着用をめぐってトラブル多発、現場CAが戦々恐々
国内外の航空需要の回復で、飛行機の中でのマスク着用をめぐるトラブルが増加しそうだ。ワクチン接種率向上で国際的に出入国規制が緩和に向かう中、アメリカの航空各社のように機内でマスク着用義務が撤廃されるケースも出てきた。
「ずっと酒を飲んでいるんだからマスクをつけなくてもいいだろ? それともマスク越しに飲めっていうのか?」
これは筆者が取材した大手航空会社のCAが実際に5月に乗客から受けた発言だ。6月に入ってからも東京から沖縄などリゾート便では気の緩みからか、アルコールを飲み続けることでマスク着用を拒否する乗客が少なくないという。以下はそのCAの話。
「去年の緊急事態宣言や自粛期間中には、飲食店の夜間営業が20時で終わってしまうため、機内で提供されるアルコールをがぶ飲みして『飲みだめ』する乗客が増えていました。ただ飲んでいるだけなら全く問題ないのですが、声を出したり鼻歌を歌ったりする人もいて、周囲からのクレームへの対応も大変。
最悪なのは『マスクしない派』と『マスクをしないといけない派』でのトラブル。両者の座席が近いと、マスクをつけるつけないで揉めて、現場のCAが仲裁に入るという事案もありました。航空機は一定時間密室で見知らぬ相手と同じ空間にいなければいない密室。マスクをつけている側は真面目にやってるのに割を食っているという不公平感もあり、機内では揉め事が起きやすくなっているのが正直怖いです」
日本の航空会社はマスク着用(あるいはフェイスシールドなどの代用品)を必須とする方針をとっているが、アメリカではウィズコロナ政策に舵を切る流れの中で、今年4月の連邦地裁判事がバイデン政権の公共交通手段に対するマスク着用義務を無効とした。デルタ航空など大手航空会社で機内でのマスク着用義務を撤廃する動きが相次いだ。「マスクをつけるつけないは個人の自由」という社会的合意が生まれたことで、マスクトラブルは基本的には減少していくと見られている。
アメリカでもこの判決が出るまでは日本と同様にトラブルが相次いでいた。米連邦航空局(FAA)によると、2020年後半からマスク関連の問題は急増し、21年のトラブル報告件数5981件のうち、マスク関連は4290件に上った。
今年は3月21日までの間に961件、そのうちマスク関連は66%の635件でかなりの割合を占めている。トラブルの詳細は明らかにされていないが、日本と同じでマスクの着用拒否などだと推察される。
日本国内でも新型コロナウイルスに対する警戒感が薄れ、マスクを着用しない状態で搭乗することを求める乗客も増加しているという。一方、日本の航空会社はマスク着用(あるいは、フェイスシールドなどの代用品)は「必須」としつつも、マスクをしていないというだけでは搭乗拒否まで要求する権限はない。
海外ではマスク着用をめぐって対応に迫られる客室乗務員(CA)に暴行被害が出る事案も発生しており、現場は戦々恐々としているという。
リゾート便で「酒を飲んでるんだからマスクつけなくてもいいだろ?」と凄む客
アメリカでは21年の乗客の問題行動のうちの8割がマスク関連
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ジャーナリスト。航空業界、防衛など幅広い分野をカバー。「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「ビジネスジャーナル」などに寄稿。最近では日本の客室乗務員の労働災害事件、ライセンス問題、企業のガバナンス問題に関心がある。情報提供はTwitter:@kyuzoleaksまで
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