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20分程度でも効果大!睡眠コーチが教える「科学的に正しい昼寝」

 スリープコーチの矢野達人と申します。これまで運営する快眠サロンや企業セミナーを通じて、約2万人の睡眠をサポートしてきました。また、最近では1日を90分×16サイクルと捉えて管理する「R90テクニック」というメソッドを元に、五輪選手などアスリートへのスリープコーチングも行っています。そんな経験から、皆さんが「日々のパフォーマンスを最大化させる」ための、睡眠改善のテクニックをお伝えしていきます。

スリープコーチの矢野達人氏

もともと人間は「夜にまとめて寝る」生活ではなかった

 現代は夜にまとめて睡眠をとるのが一般的ですが、実は、もともと人は一日数回にわけて睡眠をとっていました。19世紀におこった産業革命によって、まとまった勤務時間に分けて労働効率を上げるという考え方が広まったことで、睡眠も夜にまとめてとる文化が広まったと言われています。  とある実験によると、毎日14時間、暗闇状態の部屋に入れられた被験者の睡眠パターンを観察したところ、約4週間目で、4時間寝たところで目を覚まし、起きた状態が1~2時間続いた後でまた再び4時間寝る、という睡眠パターンとなったそうです。  つまり、外的な影響を受けない状況下にあれば、人間の生理的本能は、睡眠を数回にわけてとるということが証明されたわけです。  また、現代人の脳は、昼過ぎ頃に自然と眠気が出る仕組みになっています。昼ごはんを食べた後に眠たくなるのもその証左です。  これらのことから、人間は夜の睡眠だけではなく、日中にも短めの睡眠をとって脳パフォーマンスを保つという本能があると言えます。

昼寝の有無がパフォーマンスに差を

 であれば、この本能に逆らわず「CRP」という時間を確保することが、昼間のハイパフォーマンスや夜のハイリカバリーにも繋がる……と、私たちは考えています。CRPとは、Controlled Recovery Periodの略で、日本語にすると「計画的にとる短めの仮眠」と考えてもらえればOKです。最近では「パワーナップ(昼寝・仮眠)」という言葉も聞かれたりするかもしれませんが、同じようなものだと考えてください。  昼寝の有無がパフォーマンスに差を生むのは間違いありません。例えば、NASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙飛行士に26分間の昼寝をとらせた結果、認知能力が34%上昇し、注意力も54%上がったという実験があります。仮眠をとらずに連続で作業するよりも、短時間の仮眠を挟むほうが作業能率が上がるのが明確で、GoogleやApple、Microsoft社も従業員に仮眠を勧めています。  ただ、それほどの効果が期待できる「CRP」ですが、眠たいときに仮眠をとればいい、という単純な話ではないんです。
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CRPを効果的にとる3つのポイント
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スリープコーチ。上級睡眠健康指導士。(一社)オルソスリープアカデミー代表理事。2016年に「快眠ほぐしサロン すいみん」(大阪市)をオープンし、約2万人の睡眠をサポート。また、企業向けに睡眠セミナーも実施してきた。2022年2月からニック・リトルヘイルズ氏と正式に契約し、アスリートに向けた睡眠指導も本格化。社会全体の睡眠の質を高めるために奮闘している。Instagram(@tatsutoyano)Twitter(@yanotatsuto

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