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「女性が抱く違和感はほぼ100%正しい」違和感の時代を生き抜くための方法とは?/春日武彦×平山夢明

 コロナ、ウクライナ侵攻に安倍元首相の暗殺……。2020年以降、「世の中は狂ってしまったのか?」と思わされるような事件・事象が頻発しました。  でも、疫病、戦争、暗殺などは長い人類の歴史を考えれば、「平常運転」なのかもしれません。  果たして、世の中は狂ってしまったのか、否か? そして、それらとは関係なく存在する「個人的な狂気」とどう付き合っていくべきか?  ベテラン精神科医・春日武彦さんと特殊系小説家・平山夢明さんの”鬼畜コンビ”が、分断する世の中をばっさりと斬り、それらに対する処方箋を提示します。 (本記事は春日武彦・平山夢明の共著『「狂い」の調教』より、抜粋したものです)
春日武彦 平山夢明

(左から)春日武彦氏、平山夢明氏

果たして、この世の中は狂ったのか?

――この数年で「すっかり世の中は変わってしまった」と感じる人も多いと思います。ずばり、世の中は狂ってしまったのか否か? お2人はどう思われますか? 平山:俺からすると「まともになった」気がする。あのバブルのバカみたいなことやっていた頃を考えればね。 春日:うん。 平山:疫病や戦争の不安はあるけど、内面的にはまともになりかけてた。でも、それを安倍政権の約8年間が完全にダメにしてしまった気がする。今後、浄化作用が進むといいね。だって今まで、旧統一教会なんて触れなかったじゃん。  表立って批判すると怖い。顔を出して発言すると危ないって、俺たちは受け止めてたもん。学生の頃も「原理研究会に入るなよ」って言われてたし。当時はまだ学生運動みたいなのもいっぱいあったけど、それでも「怖いからな」って言われてたから。それに比べれば、相当な進歩じゃない?

“勢いのある理屈”ばかりが大手を振るう

――春日先生はいかがでしょう。世の中が狂っていると思われますか? 春日:俺はでかい話のことはよく分からないけど、今は意外と理性的、理屈立ってものは考えてる気はするよね。ただ、それが陰謀論的なとんでもない理屈だったりする。例えばマッチングアプリなんかも考えようによっては、非常にいいシステムなわけじゃない? それで救われるヤツも少なからずいるわけで。  だけど、やっぱりどこか根本的に間違ってる。「理屈では正しいけれど、実は間違ってる」っていうことがものすごい乱立している印象があって。  ただ、「これはおかしい」「こっちが正しい」って、うまく言い切る方法がなくて、「なんか違和感ばっかり」な気がするんですよね。そうなるとさ、「論破した」とか勢いのいいヤツばかりが強引にいっちゃう。「いや、これは理屈としては泥臭いけれど、やっぱりこの地道なこれが一番だよね」みたいな考え方はどうも旗色が悪くてね。いかにもスパーッと遠くまで見通せるような、一見そう思える勢いのある理屈が勝っちゃって。それで変な方向に行ってる気はするよね。 平山:「狂ってる」よりも、やっぱり「違和感」の時代だよね。 春日:そうだね。あまりにも理屈が通りすぎてるとか、話がうまいのは、当然ヤバいんではないか。ただ、その「ヤバい」がうまく説明できない。 平山:違和感の原資、根拠になっている「本当はこっちを大事にしなくちゃいけないんじゃないか」っていう立場の人が社会的弱者になってしまう。強者になれないってことの違和感って、巨大だよね。  だって、トランプ見てたってそうだよ。あんなめちゃくちゃなヤツが大手を振ってるとか、誰が見たって「こいつ、噓ついてる」ってヤツが国税長官になっちゃうからさ。そんなバカな話ないじゃない。その違和感だよね。
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違和感は直感レベルでも当たる
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「狂い」の調教

違和感を捨てない勇気が正気を保つ

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