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『THE SECOND』が選んだ「3点審査」を徹底分析。ギャロップ、マシンガンズ、囲碁将棋が「284点」で並んだ奇蹟の夜を振り返る

 5月20日午後7時から11時までの4時間にわたって『THE SECOND~漫才トーナメント~』が開催された。「結成16年以上」のベテラン漫才師8組(金属バット、マシンガンズ、スピードワゴン、三四郎、ギャロップ、テンダラー、超新塾、囲碁将棋)による「セカンドチャンス」をめぐる戦いを審査したのは100人の観客。芸人審査をあえて選択せず、考え尽くされたという画期的な審査方法はどういう仕組みで、どういう効果を生み出していたのか? 
THE SECOND

「結成16年以上」のベテラン漫才師たちが青い炎を燃やした『THE SECOND』。4時間の熱戦から数々の名シーンが生まれた(イラスト/まつもとりえこ)

 M-1グランプリ、キングオブコント、R-1グランプリ、THE Wなど有名お笑い賞レースの採点結果を分析してきた賞レースウォッチャー・井上マサキ@inomsk)が『THE SECOND』を解説、お笑いマニア・まつもとりえこ@riekomatsumoto)がイラストを担当します。

審査員も観覧ゲストもいない「漫才師ファースト」の大会

 ベテラン漫才師たちが、全国ネットの生放送で4時間にわたり激闘を繰り広げた。20日放送の『THE SECOND~漫才トーナメント~』(フジテレビ系列)は、「結成16年以上」「賞レース優勝経験なし」の漫才師を対象にしたお笑い賞レース。M-1の出場資格(結成15年以内)を失った芸人たちに、「セカンドチャンス」をつかんでもらいたい……と新たに立ち上げられたものだ。  番組が始まり、MCの東野幸治と宮司愛海アナウンサー、アンバサダーの松本人志が登場する。オープニングVTRが流れ、トップバッターの金属バットがネタ披露したのは、番組開始から10分ほど。ここで「もう始まるの!?」と驚いた人も多かったのではないか。 『THE SECOND』には、審査員も観覧ゲストもいない。だから、呼び込んだり紹介する時間はいらないのだ。主役は漫才師たちと、舞台を囲む270人の観客(番組冒頭で松本「270人でしょ? 俺久しぶりやマスクしていない270人」)。徹底して「漫才師ファースト」に作られた『THE SECOND』を振り返りたい。

「3点審査」だからこそのヒリヒリした結末

『THE SECOND』にエントリーした漫才師は133組。選考会で32組に絞られたあと、2回の「ノックアウトステージ」で8組が勝ち残り、20日放送の「グランプリファイナル」の日を迎えた。 『THE SECOND』の大きな特徴は、「ノックアウトステージ」以降の戦いがトーナメントで行われること。1対1の”タイマン勝負”であり、審査は100人の観客が行う。持ち点は1人につき3点で、審査基準は「面白くなかった 1点」「面白かった 2点」「とても面白かった 3点」。2組の点数に差が付いてもいいし、2組とも3点にしても構わない。  この採点については、入念にシミュレーションを繰り返したという(※マイナビニュース「『THE SECOND』試行錯誤を重ねたルール設計「審査員が炎上するのはもう見たくない」より)。持ち点を10点にすると、1点から10点までの開きが大きくなる。0点~2点だと、なんとなく0点は付けづらい。「面白かった側の札を上げる」といった二者択一にすると、各個人では僅差でも全体では惨敗した感じが出てしまう。
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全試合の点数をまとめてみると…
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ライター。大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務後、フリーランスのライターに。理系・エンジニア経験を強みに、企業取材やコーポレート案件など幅広く執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも多数出演。著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。X(Twitter):@inomsk

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