ライフ

暴走族の「爆音」が進化。旧車の“音職人”はミュージシャンさながらのテクニック

 こんにちは。伝説のレディース暴走族雑誌『ティーンズロード』3代目編集長をやっていた倉科典仁と申します。ティーンズロードは1989年に創刊され、90年代には社会現象に。現在は廃刊となっておりますが、そんな本誌に10年以上携わっていました。
ナックルズTV

画像は「ナックルズTV」より。以下同

 当時から30年以上経ち、現在は2023年。令和時代を迎えているわけですが、「今でも暴走族なんているの?」と思われている方が大半だと思います。もちろん、いわゆる「暴走族」は取締り強化もあって影を潜めました。  が、私が暴走族関連から離れていた間に、彼らのカルチャーも進化していたようです。それを実話誌『実話ナックルズ』のYouTubeチャンネル「ナックルズTV」を立ち上げたことで、目の当たりにすることになったのです。

“暴走族スタイル”の「旧車會」とは何者か?

旧車會イベント

旧車會イベントの様子

 暴走族というヤンキーカルチャーが衰退をしていくなかで、その隙間をついて出てきたのが「旧車會」という集団です。  暴走族の年齢層が10代なのに比べて、旧車會は40〜50代、まさにティーンズロードを読んでいた世代と言っても過言ではないでしょう。  旧車會に詳しい人物に話を聞くと、旧車會という存在が目立ってきたのは10年くらい前からだということです。明確なルーツはわからないのですが、さまざまな改造車が集まっていた横浜の大黒ふ頭にコルクハン(半キャップと言われるヘルメット)にロングブーツを履いた「横浜系スタイル」という暴走族たちの出立ちで、単車も昭和の暴走族が愛した名車(現在では1台数百万円)に当時の改造をオマージュしたスタイルで乗り付けていた人たちがいた。  それを見て「あの集団はなんなの?」と聞いたところ「彼らは昔(暴走族が全盛期の頃)を懐かしんで旧車のバイクに乗る人たちで、最近増えているらしいんです」とのこと。  彼らは古き良き「暴走族」スタイルをリスペクトしているのですが、当時と違うのは、免許も車検もちゃんと取り、ヘルメットも被ってブーツを履くということにこだわりを持っている。昔のように高速道路の料金所で料金を払わなかったり、悪質な暴走や迷惑行為などはせず、あくまでツーリングを楽しんでいる、それが「旧車會」という存在なのだとか。

アクセルを“楽器”のように操る「爆音職人(音職人)」たち

ナックルズTV

画像は、YouTube「ナックルズTV」の動画「遂に復活!【東北旧車イベント NM5】爆音が宮城に響き渡る!コール職人一気見せ【Part1】This is NUTs SOUND OF MOTORCYCLE in japan !!」より

 しかし、私が注目しているのは旧車會の方たちの恐るべき「テクニック」なのです。私はナックルズTVの取材で、旧車會のイベントに行くことがあるのですが、そこではティーンズロード発売当時にはあまり見られなかった彼らの進化した姿がありました。  昔の暴走族たちは大きな音を立て、いわゆる「空ぶかし」をしながら走っていたのですが、ここ十年でその「空ぶかし」というただ単に爆音を立てて走る行為ではなく、アクセルワークとクラッチの操作で、まるで楽器を使って音楽を奏でているかのようです。  彼らはそれを「コール」と呼んでいるのですが、そのテクニックたるや、ミュージシャンさながらです。  そういった旧車のイベントでは「爆音職人(音職人)」と呼ばれる猛者たちがコールのテクニックを競うコンテストもあり、ギャラリーが500人近くいる会場でひとりずつ披露することも。コールが始まると、ギャラリーたちはスマホやビデオカメラを一斉に向けるのですが、もはや芸能人の記者会見のような光景です。
次のページ
「日本独自の文化」のひとつとして海外からも注目
1
2
伝説のレディース暴走族雑誌『ティーンズロード』をはじめ、改造車だけを扱うクルマ雑誌『VIP club』や特攻服カタログ『BAMBO』、渋谷系ファッション雑誌『MEN’S KNUCKLE』など、数々の不良系雑誌の編集長を務めて社会現象を起こす。現在は、大洋図書発行の実話誌『実話ナックルズ』のYouTubeチャンネル「ナックルズTV」や、ギャル男雑誌『men’s egg』をWebで復活させたYouTubeチャンネル「men’s egg 公式」のプロデューサーとして活躍中。

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ