“写真館は儲かる”神話が崩壊か。業界トップの「スタジオアリス」が苦戦する理由
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
お正月や成人式の撮影でにぎわう写真館。スタジオアリスは子育て世帯にターゲットを絞り、衣装を無料で着放題にする斬新なサービスを提供して業界トップに躍り出ました。堅苦しく職人気質だった写真館の門戸をこじ開け、誰でも気軽に利用できるようにした立役者でもあります。
コロナ禍の逆風でもスタジオアリスの業績は堅調に推移していましたが、ここにきて暗雲が立ち込めてきました。
スタジオアリス2023年3-11月の売上高は、前年同期間比6.9%減の274億1600万円、営業利益は同49.9%減の19億1300万円でした。上半期の営業赤字から黒字転換を果たしたものの、営業利益は前年の半分以下の水準に留まっています。しかし、通期の業績においいては強気の予想を出しています。
2024年2月期通期の売上高は、前期比3.7%増の400億円、営業利益は同2.8%増の41億3000万円。通期では増収増益を見込んでいるのです。
通期の営業利益率は10.3%ですが、9か月が経過した段階では7.0%。3ポイント以上引き上げなければなりません。
スタジオアリスの売上高は七五三シーズンに偏重しており、全体のおよそ1/4を10月中旬から12月初旬までの時期が占めています。
スタジオアリスは2023年7月1日に値上げを行いました。七五三セットは2000円から5000円程度引き上げています。七五三セットの単価は4万円から8万円程度と高額。繁忙期前の値上げにより、巻き返しを図る準備は整えていました。
しかし、その戦略が上手くいっているようには見えません。
七五三シーズンの10月の売上高は前年同月比12.6%減の39億3300万円、11月は同5.3%減の48億7400万円でした。スタジオアリスは、2023年8月末時点での店舗数は452。前年と比較すると13店舗減少しています。しかし、割合にすると2.8%少なくなっているにすぎません。
2023年11月の客数は、前年同月よりも5.3%少ないものでした。集客に苦戦している様子が分かります。客単価は3.9%上がっていますが、客数減を補填できていません。繁忙期である11月を経過した累計売上高は、前年よりも1割少ない数字です。
残り3か月で増収増益を狙うのは厳しい道のりだと言えるでしょう。
稼ぎ頭の七五三セットを軒並み値上げ
11月までの累計売上高が「昨年の1割減」
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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