看護師から“電気工事会社の社長”に転身した女性。力不足を痛感するも「コミュ力活かして」
建物内の電気配線工事や、照明器具の取り付けなどを行う「電気工事士」。高度な技術と経験さえあれば、年収1,000万円以上を目指せる職種となっている。
その一方、建設業界は深刻な人材不足であり、電気工事士の採用に苦しむ企業も多い。そんななか、TikTokやInstagramといったSNSを巧みに駆使する「建設社長のあやか」というアカウントが注目を集めている。電気工事会社の“あれこれ”を面白おかしく発信するショート動画は、業界内外から関心が寄せられ、総フォロワー数は5万人を超える。
「看護師から電気工事会社の社長になりました」
そう語るのは、株式会社レナトゥス 代表取締役の佐藤綾華さん。東京都町田市の出身で、小中高は地元の学校に通っていたという。その後、「看護師になりたい」という目標を胸に、横浜・戸塚の看護学校へ3年間通った。看護師の資格を取り、一番最初に就職したのは混合病棟(異なる診療科や病状の患者が同じ病棟に入院している病棟のこと)だった。
「子どもから大人、シニアまで幅広い世代の患者さんがいる混合病棟で3年間働きました。ただ、その病院には産婦人科と脳神経外科がなかったんですよ。次に働くとしたら一般病棟だなと思い、脳神経外科の専門病院へ転職にしました」
だが、転職先の病院が相当のハードワークだったと佐藤さんは振り返る。
「まさに“ザ・看護師”という感じで、本当に体力勝負の職場でした。日勤も夜勤も経験しましたが、何より『人の命を預かる』という責任とプレッシャーが常にある環境が辛くなってしまって。心身に不調が出てくるほど、疲弊してしまったんですね。
看護師の仕事が嫌いになったわけじゃないけど、現状を変えなければいけないと思って、異業種の仕事を探し始めたところ、図らずも電気工事会社で事務をすることになりました。電気工事士に興味があったわけではなかったのですが、何かの縁だなと思って」
事務職として働くなかで、今まで力仕事の印象が強かった電気工事士のイメージが変わっていったという。
もちろん体力が求められる場面もあるものの、電気設備の設置や配線作業は非常に繊細な手先を要する。佐藤さんの職場は男性がほとんどだったが、「女性でも電気工事士として働けるのではないか」と考えるようになったそうだ。
そんな折、知人から「電気工事会社の社長をやってみないか?」と声をかけられたのがきっかけで、2023年4月にレナトゥスを創業。脳神経外科の看護師から電気工事会社の社長へ大胆な転身を果たしたのだ。しかし、はじめは社長業に慣れるのに相当苦労したと佐藤さんは語る。
「いざ社長として会社に入ると、覚えることがたくさんあって大変でした。私は一度も現場へ出たことがなく、普段交わす挨拶も『ご安全に』という独特な言い方をするなんて、想像もできない未知の世界でした。
そうした業界用語はもちろん、経営のことも全然わからない状態で、最初は本当に自分の力不足を痛感して悔しかったのを覚えています」
いったい、「建設社長のあやか」は何者なのだろうか。今回は神奈川横浜市鶴見区を拠点に電気工事業を営む株式会社レナトゥスを訪れた。
SNSで話題「建設社長のあやか」正体は元看護師
電気工事会社の社長に転身「覚えることがたくさんありすぎて…」
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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