“赤羽のポール・ポッツ”は元漫画家だった!?
どこか気になる存在だけど、自分から積極的には近づけない……。そんな思いを街角の不思議な人たちに抱く人も多いだろう。だが、東京には彼らがイキイキ街に溶け込むパラレルワールドがあるらしい。その地は、北区赤羽。漫画『東京都北区赤羽』の著者で、多くの赤羽住人と交流を持つ漫画家・清野とおる氏と一緒に、ワクワクの赤羽巡りに繰り出してみた!
◆清野とおると行く【赤羽パラレルワールド】紀行(後編)
⇒【前編】はこちら「“赤いおじさん”のお宅を拝見!」
https://nikkan-spa.jp/176088
赤羽名物“赤いおじさん”の自宅訪問を終え、再び赤羽駅付近に戻ってくると、今度はどこからか歌声が……。発信源を辿ると、雨の中、ギターを鳴らし、甘い声で歌うシンガーを発見。「あの人は、斉藤さんです。“赤羽のポール・ポッツ”の異名をとる男です」と清野氏。
「今日は雨のなか、ありがとうございます!」と、指も真っ赤にかじかむ寒さのなか、ギターを弾きながら気さくに挨拶する斉藤竜明さん(42歳)。斉藤さんは、ピザの配達をしながら、路上シンガー・ソングライターとして活動中。このハングリー精神なら、さぞや生粋の音楽野郎かと思いきや。
「実は、昔はこう見えても漫画家だったんです。でも、いまいちパッとしなくて……。そしたら’00年に一本のギターを拾って。その瞬間、『この一本のギターでどこまでやれるのか』という思いが急にみなぎってきたんです」と語る斉藤さん。偶然目についたギターがきっかけで、12年間も赤羽で歌い続けるとは。しかし、現在42歳。夢を追うにはやや遅咲きすぎる年だが、転職は考えなかったのか。
「考えたことないです! 貧乏はツラいですが、僕の夢は音楽だけで食っていくことですから!」とキラキラした瞳で眩しい斉藤さん。
その姿勢が伝わるのか、彼が1曲歌うごとに人だかりができ、携帯で動画や写真撮影をする人が続出。なかには「毎日斉藤さんに仮面ライダーの曲を歌ってもらうのが日課」という男子小学生もいた。
こうして赤羽の有名人たちに遭遇したわけだが、取材後、なんだか不思議な脱力感に襲われた。今回、赤羽ナビゲーターを務めてくれた清野氏も、こう語る。
「彼らに会うと、そのエネルギーに引き込まれますよね。でも、僕は昔から街の不思議な人が好きなんです。彼らの多くは目的意識が明確だし、普通の人にはないユニークな発想がある。僕らが固執している常識や固定概念を、簡単にぶち壊してくれる心地よさがあるんです。僕の平凡な日常に刺激を与えてくれる貴重な存在ですね」
路上で出会う不思議な人々。それは、刺激的な異世界への入り口なのかもしれない。
【清野とおる氏】
漫画家。東京都北区赤羽在住。赤羽で出会った人々との交流を描いたエッセイ漫画『東京都北区赤羽』が人気
取材・文/青山由佳 キンゾー 橋本範子 藤村はるな 高石智一(本誌) 撮影/菊竹 規
― 超局地的[街の名物人間]直撃リポート【7】 ―
『東京都北区赤羽 』 赤羽に秘められた恐ろしいパワー! |
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