「すでに歯がボロボロ。歯医者に行っても意味がない」は勘違い/歯科医師・野尻真里
自分自身の生まれ持った歯を一生涯残すことが大切。そう聞くと、「すでに歯がボロボロだから予防を意識する意味がない」や、「すでに歯を何本か失っているから手遅れだ」という患者さんが多く見受けられます。
歯を何本か失ったからと言って、諦めるのは早いです。最後の1本しか残っていなかったとしても、その1本があるのとないのとでは歯医者の観点では「全然違う」のです。歯がないと、噛む力が掛からないため、顎骨の幅や高さは維持されず、骨は吸収されて痩せていきます。
例えば、入れ歯をつくる際、歯が1本でもあることでその部分の顎骨が吸収するのを防ぐことができ、入れ歯の安定感としても無歯の状態と比較すると、とても良いのです。
また、“自分の歯と全く同じ感覚”というのは、インプラントや入れ歯では実現不可能。自分の歯でしか得られません。
歯がすでに何らかのダメージを負っているということは、そのようになる“原因”が必ず存在しています。
歯は1本が悪くなると“その歯だけの問題”として捉えられやすいのですが、じつは唾液や神経、血管などを通じて全て同じお口の中の環境下にあります。つまり、1本の歯が病気に罹った時点で、他の歯も悪くなるリスクに晒されているのです。
例え治療を行ったとしても、そもそも原因が何だったのかをしっかり精査し、改善をする必要があります。今、自分の歯が何本あって、むし歯や歯周病の状態はどうなのか、唾液や細菌数に変動があったのかを事細かに検査し、自分の健康のリスクとなっていることは改善していきましょう。もちろん、歯医者さんから治療が必要だと診断された歯は治療を受けることが大切です。
ここで覚えていただきたいのは、まず、お口の中の病気を予防するのに手遅れということはありません。もちろん、この記事を読んでいる時点で、むし歯にも歯周病にもなったことがないという状態が理想であることは確かです。しかし、そのような人は多くはないでしょう。
今お口の中にまだ歯が1本でも残っているのならば、その歯を健康に保つことが大切なのです。そこで今回は、もうすでに歯がボロボロ、歯を何本か失っているという方が、今後どのようにお口の中の健康を維持して予防をおこなっていくべきかについてお話します。
歯医者の観点からは「歯は1本でも多く残っているに越したことはない」
最初にするべき行動は「現在の自分のお口の中の状況を知ること」
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一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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