タワマンの“強固すぎるセキュリティ”が命取りに。救急救命士が「絶対助からない」と嘆く現場も
東京の湾岸エリアなどにそびえ立つタワーマンション。通称“タワマン”は、見晴らしの良さや豪華な内装に目を奪われがちですが、長所はそれだけではありません。近年、セキュリティがますます強固なものになっているのです。
タワマンは、エントランスから住戸まで何重もの認証が必要になっていますが、これは序の口。どのタワマンにも標準装備で施されています。安心感はありますが、一方で鉄壁のセキュリティが命取りになることもあるそうです。これに関して実体験を投稿し、話題になったのが救急救命士歴15年のたたらさん。
腹痛を訴える高齢者の救急要請があったため、某所にあるタワマンに急行。エントランス前まで到着したものの、集合ロックを解除するパニックスイッチが見つかりません。たまたまその場にいた宅配便の人に中に入れてもらいましたが、エレベーターに乗るには、さらに開錠が必要でした。隊員たちからは、「死にそうな時、絶対助からない」との声が飛び交い……。
今回、たたらさん本人に取材を敢行。本人の口から詳細を語ってもらいます。
――非常用の設備は利用しなかったのですか。
たたら:いわゆるタワマンには非常用の設備が備えられていることが多く、火災などの有事の際には、屋上のヘリポートなどを使用することもあります。しかし、今回は火災ではなく一般の救急事案でした。まず、エントランス前で管理室のインターホンを鳴らしましたが誰も応答せず、パニックオープンという非常用のボタンを押して開錠しようとしました。
こうしたマンションの場合、管理人が24時間いることのほうが多いのですが、まれに常駐していない場合もあるんです。あるいは常駐していても、所用で離席しているケースもゼロではありません。また、パニックオープンのボタンが足場無しでは届く位置にないこともあり、入り口からエレベーターに行くまでにかなり時間を要します。心肺停止や心筋梗塞など1分1秒を争う患者の場合、戸建てや一般的なマンションに比べて手遅れになる可能性が高いと言えるでしょう。
――「パニックスイッチ」のような緊急解除ボタンは見つからなかった?
たたら:ざっと見回したのですが、このマンションの緊急解除ボタンは見当たらず、困惑しました。たまたまその場に居合わせた宅急便の人が開けてくれたのですが、彼がいなければどうなっていたことか。他のタワマンですと脚立が無いと届かない天井部分に設置されていたり、独立したタイプのインターホンの裏に分かりにくいように設置してあったりすることもありました。
強固なセキュリティを謳うタワマンは、悪意ある人間を警戒しているので、緊急解除ボタンの存在を知られないようにしています。すぐに手が届くところに設置したくないのでしょう。発見しにくい場所に設置してあるため、初めて行ったところでは見つからないこともよくあります。消防隊と連携出動した救助事案では、緊急解除ボタンを押した経験が何度かあります。
管理室のインターホンを鳴らしたが反応がない
発見しにくい場所に設置してあるからこそ…
大阪府出身。医療ジャーナリスト、ライター。人物取材を中心に病気と共に生きる人のライフスタイルや社会問題について書いています。
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