東住吉区長更迭は見せしめ? 橋下大阪市長の真意は…
「調整能力が不足している」「組織人として適格性に欠ける」「僕の直属の部下としてやってもらうわけにはいかない」
3月8日、橋下徹大阪市長が、東住吉区の和田智成区長の更迭を発表した。和田氏は昨年8月、橋下市長が推し進める市制改革の目玉として導入された公募区長の一人で、大阪市のホームページ内にあるプロフィール欄には、「飲食業界にて現場、管理職、経営を経験」といった経歴が申し訳程度に書いてある以外は、政治経験や過去の活動に関して一切オープンにされていない人物だ。
「どこの馬の骨ともわからん人間を区長にしておいて、後になってオレとは意見が合わんからクビや! いうのはいかがなものかと思いますよ。選んだのアンタやろ! っていう(笑)。ただ面白いのは、更迭された和田さんの評価は地元では意外に悪くない。区民の中には『和田さん切るんやったら、ほかにクビ切らなあかん区長ぎょうさんおるやろ!』というような声も多いんです(笑)」
在阪メディアの記者がそう話すように、公募区長が発表されて以降、クビになってもおかしくないような“問題区長”が事あるごとに報じられてきたのも事実だ。就任早々、ツイッター上の批判に対して「アホか、相当な暇人やな」などと不適切な書き込みをおこない、橋下市長から「口頭注意」のお咎めを受けた区長もいたが、今回更迭された和田氏の評判が「思った以上に悪くない」というのは少々意外にも映る。
区役所関係者が話す。
「ほかの区長さんに比べて会合や説明会の数もこなしていましたし、区民目線で意見を吸い上げて、それを橋下さんに物申すの姿勢でぶつけるようなタイプの人でした。橋下さんが肝煎りで押し進めていた“赤バス”(大阪市コミュニティバス)の補助金凍結に関しても、和田さんだけは『他の区に比べて病院や福祉施設に行けなくなるお年寄りが多く出そうなので、東住吉だけは民間委託にして存続させたい』と独自案を出していたくらいです。橋下さんは自分の意見に従わないとわかると態度を一変させる人ですから、目を付けられていたのは間違いないでしょう。ただ、和田さんの側もそれを承知でやっていた節があって……。現在の公募区長は選挙の洗礼を受けておらず、扱いとしては、政治家ではなくいわゆる『事務方のトップ』にすぎない。大阪都構想がこのまま進めば公選制に移行するわけですが、晴れて選挙になったときのことを考えて、自分のカオを売るためにあえて橋下さんと対等にやり合う姿勢をパフォーマンスとして見せていたんじゃないか。まぁ、橋下さんがもっとも嫌うのがこのタイプなんですけどね(笑)」
実際、橋下市長は会見で「『自分はちょっと違うんだよ』とアピールするのはわかるが、やり方が子供じみている」とも漏らしていたが、これもあながち間違っていない人物評のようだ。地元区民が続ける。
「世界最高齢の女性としてギネス認定を受けた大川ミサヲさん(115歳)が、12日に東住吉のご自宅で市民特別表彰を受けたんですが、このとき橋下さんの代わりに副市長の村上(龍一)さんが行ったら、“親分”を差し置いて先に和田さんの名前がどーんと書かれた花が飾ってあった(笑)。当然、これを伝え聞いた橋下さんは怒ったそうですが、和田さんという人は、こういう立ち回りに関してはヘンに抜け目ない人だった(笑)。」
ただ、一方で今回の更迭劇は「見せしめ」といった陰謀論めいた意見もある。大阪市議会議員が話す。
「橋下さんが2014年度に導入を目指している小中学校の学校選択制が、実は思うように進んでいません。24人の区長は制度そのものには賛成しているのですが、制度の周知徹底がまだまだ行き届いてないうえ、反発する区民も多く、1年後の導入に慎重なスタンスを取っている区長がまだ半数以上もいます。橋下さんとしては、期限内に導入できないと言っている区長など全員クビにしたいが人数も多いので現実的にそれは難しい。だから、見せしめに誰か1人切ろうと考えた……それが、すでに期限内導入を“反対”していた和田さんだったというわけです」
報道では、和田氏が一方的に市長との意見交換の約束を「公務」を理由にぶっちぎった資質的に問題アリの区長といったそしりを受けているが、「見せしめ」のクビ切りが本当なら、橋下劇場に踊らされた名もない端役の一人だったというわけだ……。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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