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ラブホに入っても「その気はなかった」。それでも“性的同意は難しくない”女医が断言するワケ――ニュース傑作選

2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。独自の視点で2024年を振り返る「ニュース」部門、第7位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月~10月まで。初公開2024年6月15日 記事は取材時の状況)  *  *  *

女医が断言「性的同意は難しくない」

ホテル 女性

写真はイメージです

「ホテルまで行ったのに、あとから『同意していなかった』と言われたら、怖くてなにもできない」 「『本当はイヤだった』かどうかなんて、なんとでも言えるんじゃないの?」  メディアにたびたび取り上げられる性加害のスキャンダルに、こうした意見が出ることはいまだに少なくない。2023年7月に刑法が改正され、これまで一般的に「レイプ」と呼ばれていた性加害の罪状が「強制性交等罪」から「不同意性交等罪」に変わり、性的行為を交わす際には「性的同意」を得ることが必須となっている。トラブル回避のため、セックスの前にアプリで言質を取る「性的同意アプリ」というサービスまで登場している。では、私たちはこの言葉をきちんと理解しているのだろうか? 「わざわざ言葉に出して『あなたは同意していますか?』と相手に聞くのは野暮では?」  そんなモヤモヤを抱えている人も少なくないはず。そこで、『女医が導く いちばんやさしいセックス』(扶桑社)を上梓した医師・富永喜代氏に、そのポイントと同意の取り方を聞くと、意外にも「なにも難しくない」との答えが返ってきた。 富永喜代(以下、富永):性的同意とは、セックスだけでなく、キス、体に触れるといった性的な行為をする際、事前にお互いが交わすべき同意のことで、英語では「Sexual Concent」と言います。  性的な行為に対して、まずはお互いの気持ちをしっかり確認し合うこと、これが性的同意の大原則です。「ノー」や「イヤ」を言えない状態であったり、社会的・経済的な立場を利用して性交渉を迫った場合などは、「同意があった」とはみなされません。また、結婚相手や交際相手であっても、性的な行為をする場合は、やはり性的同意が必要とされます。  性的同意のポイントは、次の4つと言われています。 ①ノーと言える環境が整っていること(非強制性) ②社会的地位や力関係に左右されない対等な関係であること(対等性) ③いつでも「やめて」と言えること(非継続性) ④その行為が「したい」という明確で積極的な同意があること(明確性)  それぞれくわしく見ていきましょう。

自己主張を明確にするのが世界基準

 まず、①の「ノーと言える環境が整っている」とは、自分がされて「イヤだ」と感じた行為に対して、どんなときでも拒否できる状態にあることを意味します。②の対等性とも関連することですが、身の危険などを感じてノーと言えない状況で発せられた「イエス」は、同意とみなされません。  ②の「社会的地位や力関係に左右されない対等な関係」とは、二人の間に上下関係があったり、利害関係があったりした場合、そのことを意識しながら行われた性的な行為には、同意は成立しないということです。たとえば、「ここで断ったら、仕事で嫌がらせされるかも……」といった不安を相手が抱えた状態で性的な行為に及ぶことはNGとなります。ですから、特に自分が上の立場にいる場合は、十分な配慮が必要となります。  ③の「いつでも『やめて』と言えること」は、①と同じように思えますが、〝いつでも〞がポイントです。たとえば「キスしたけどセックスはしたくない」ときもあるし、「昨日はセックスしたけれど、今日はイヤ」というときもあります。つまり、たとえ長年連れ添ったパートナーであっても、性的な行為を行う場合は、その都度、気持ちを確認することが求められます。  ④の「明確で積極的な同意」は、キスやセックスなどをお互いが積極的に「したい」と思っているということです。「イヤよイヤよも好きのうち」の「イヤよ」は「好き」にはカウントされません。乗り気でない相手に、「そのうち盛り上がってくるはず」と勝手な思い込みで性的な行為に及ぶことはNGです。 ――なんだかセックスというよりも契約みたいですね。 富永:そうした感想も正直で良いと思います。欧米のように自己主張をはっきりする文化とは異なり、イエスとノーを曖昧にした表現に慣れてきた日本人からすると、たしかに少し面食らうかもしれません。しかし、これが現在の「グローバルスタンダード」です。国際化が進むなかで、これからは海外の方との恋愛やセックスの機会も増えていくでしょうから、なおさら〝世界基準〞を知っておくべきでしょう。
女医が導く いちばんやさしいセックス

『女医が導く いちばんやさしいセックス』(扶桑社)

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「ちゃぶ台返しもアリ」の時代
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痛みで苦しまない人生を医学で導く「痛み改善ドクター」。愛媛県松山市にて富永ペインクリニックを開院。代表を務める「まつやま健康寿命延伸コンソーシアム」は、経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」に採択。性の悩み専門の性交痛外来を開設し、全国から1万人以上がオンライン診断を受ける。医療×ITで人生100年時代を豊かにするデジタルドクターである。たしかな腕とユニークなキャラクターが人気を呼び、NHK『おはよう日本』、TBS『中居正広の金曜日のスマたちへ』などのテレビ番組にも出演。著書累計98万部。YouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は登録者27万人を数える。Facebookライブは年間1000万人以上にリーチし、日本最大級のオンラインセックスコミュニティ(会員数1.6万人)『富永喜代の秘密の部屋』を主宰

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