就活女子を“オトそう”とする人事担当者にご用心
「女子をオトすには不安なときに相談にのれ」というのが、モテ指南本の王道パターン。だが、就職活動という、人生前半・最大の不安に立ち向かう女子大生に、そんなメソッドを悪用しようとする輩が多いようで……。
2014年卒業予定の大学生、大学院生の内々定率は、アベノミクスによる景気回復への期待感の表れか、7月下旬の時点で、61.5%と前年同月より約3.5ポイントアップ(マイナビの調査より)。だが、内々定のある学生も含め、全体の55.7%がまだ就職活動を進めているらしい。
一方、安倍首相による、就活の解禁時期の後ろ倒し要請はどこ吹く風か、一部の外資系企業などは、インターンシップなどを通じて、夏から15年度卒、今の3年生との接触を開始。一部では、いち早く内定がでる「夏内定」なんていう言葉も存在するほどだ。
すなわち、戦い続ける4年生と、始めたばかりの3年生で、もっとも就職活動生の数が多くなるのがこの時期なのだ。そして、必死な女子大生が溢れかえると、そこにつけこみ、あの手この手で彼女たちをヤろうとする男性会社員が出てくるのもお決まりのパターン。5月にも、共同通信社の人事部長が女子大生に不適切な行為を行ったとして懲戒解雇になったという件が明るみになったが、それだけではないようで……。
地方から東京のベンチャー企業の説明会に参加したA子さん。なんと説明会直後、喋った若手人事社員からFacebookの友だち申請が。連絡を取り合うようになり、2人で飲むことになった。飲みの場では「ウチの会社に合ってるよ!」などと褒められ続け、ついには「選考をとばすパスをあげるよ」と言われ、気分は高揚するも……。「終電の時間あたりで『ホテルを用意してるんだけど……』と切りだされ、血の気が引いて、慌てて逃げました」と語る。
B子さんのもとには2次面接を受けた大手通販会社の人事から「マークシートのサインミスがあったから直してほしい」との電話が。呼び出されたのはホテルのラウンジで、4時間ほど話をされたが、肝心のシートは出てこず。その後、毎日のように電話があったが「選考の連絡かも……」と思うと出ざるをえず、再び会うことに。今度はバーで「俺の部下として働いてもらうから、新入社員がやるような下働きはしなくていいよ。俺、副社長のオキニだから」とドヤ顔で誘われたという。
悪いのは人事だけではない。あるテレビ局の人事関係者は、会社の名前を利用したほかの社員の横暴を嘆く。「他部署の先輩社員から、いきなり『ウチの女子アナ試験受けてる●●って知ってるか? 俺、ヤッたぞ』とだけ自慢され……その先輩にはもちろん何の権限もないのに、つけこまれた学生が気の毒です」
もちろん「年上の男と仲良くなるだけで就活が有利になるならラッキー」なんて言う女子大生も存在するし、最近では「OB訪問は出会いの宝庫☆」と煽る女子大生雑誌も。だが、実際は、社員ひとりだけで採用を決められるケースなんて、ほぼ皆無。さらに男たちは、かつて自分が就活生だった頃の気持ちを忘れ、麻痺した感覚で「有利にしてあげよう」より「ヤったろう」が先にくるパターンだらけ。女子の側が相当あざとく立ち回らない限り、利用されるだけになってしまう。
結局、今回話を聞いた女子大生2人は、事件のあと選考を辞退。A子さんは第一志望の会社の社員が相手だっただけにショックは大きく、その後の就活にも悪影響が。B 子さんは「こんなくだらない大人の相手をしないと内定ってもらえないものなのか……」と食傷気味になったという。その後、それぞれ別企業で内定はゲットできたものの、人生をかける大事な時期に、傷つけられ、混乱させられた代償は誰も払ってくれない。
A子さんが「人事とつながれば有利になるかも、と思った1年前の自分に『そんなあまいもんじゃないよ』って言ってあげたい」と語るように、ラクに見える道には思わぬ落とし穴があることがほとんど。女子大生たちは、ピュアな気持ちは男ではなく、就活そのものに向けて、自ら険しい道を進んでいってほしい。 <取材・文/霜田明寛>
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ