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過呼吸、声が出ない…ミス青学が壮絶な選考期間を振り返る

ミス青学

グランプリ決定直後、安堵の表情を浮かべる鈴木さん

 7月におこなわれた、ミス青学コンテストの候補者お披露目イベント。そのときに、どこか所在なさげに立っている女のコがいた。19歳の鈴木沙耶さん(文学部2年)だ。正直、その取材の日、最も印象の薄かったその女のコは、11月におこなわれたミス青学コンテスト本番では一変。堂々とした風格を漂わせ、グランプリを獲得した。

 ちなみに、近年のミスコンは、1日だけで終わるものではなく、長期化の流れにある。ミス青学の場合、7月のお披露目イベントで戦いがスタートし、4か月間の間にさまざまなメディア露出やイベント出演を経験。また、公式のTwitterやブログを更新し、発信することも義務付けられ、それが結果的にWEB投票の票数を左右することになる。

 その4か月の間に、鈴木さんに何が起こり、どんな気持ちで過ごしたのか。鈴木さん本人及び、関係者にインタビューを行った。さぞ華やかな4か月なのかと思いきや、口から出たのは、意外にも、過酷で壮絶な日々だった……!

「そもそも私は積極的にミスコンに出ようと思っていたタイプではなくて……」と鈴木さんはじっくりと、言葉を選んで語りだす。

「実は高校のときにも、ミスコンに出たことがあって、優勝したんですね。でも、そのときに、まったく面識のない子たちに噂をされたり、陰で悪口をいろいろ言われたりして。人前に出て目立つもんじゃないな、って学んだんです。だから、正直、もっと注目度の高い大学のミスコンに出て、しかも優勝するようなコって、どんなに精神的に強いコなんだろう、と思っていました。今回も、ミスコンを主催しているサークルの友人に強く説得されて、流されるままに面接を受けたら選ばれてしまった、というのが本当のところです」

 確かに、ネット上では、ミスコンに出て、アナウンサーを目指すようなコたちを“目立ちたがり”“腹黒い女たちの蹴落とし合い”などと罵る声も多い。だが、青学のミスコン候補者たちは和気あいあいとした雰囲気。鈴木さん自身も、実際に出場したことでそのイメージが一変するほどだったという。候補者たちの中でも特に仲が良かったという野見山友里さん(文学部3年)は語る。

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候補者全員で踊ったAKB48『恋するフォーチュン・クッキー』。左から、グランプリの鈴木さん、準グランプリの中山さん。一番右が野見山さん

「特に私と沙耶は、消極派というか……。アナウンサー志望でもなかったので、ミスコンで有名になろう、みたいな目的意識もなくて、常に怯えていました。何の防具も持ってないし、戦う意思もあまりないのに、戦場に連れて来られて、学内の視線やネットのコメントという攻撃を受けている感じ」(野見山さん)

 “ミスコンという戦場”に連れて来られ、戦うことを余儀なくされた野見山さんと鈴木さん。そして、ミスコンというものへの世間的なイメージは、さらに鈴木さんを追い詰める。

「立候補したときにつきあっていた彼氏には、別れを告げられました。彼の目には、“ミスコンに出るような自己顕示欲のあるガツガツした女の子”に映ったみたいです。他にも色々と事情はあったのですが、彼のあまり好まない方向に進んでいるように見えたみたいです。その別れと、おじいちゃんの死が重なった時期があって。そのときは、ストレスで突然声が出なくなってしまいました……」

 声が出なくなるほど追い詰められて、なぜ彼女は途中でリタイアしなかったのだろうか。

「もちろん、悩みましたし、周りにも心配されました。特に、10日間で5kgやせたときは、母親に『そんなにきつい思いするならやめちゃいな!』って。でも、流れだったとはいえ、出てしまったからには、途中で投げ出すのはカッコ悪いって思って。リタイアという選択肢だけはなかったです」

 ここまで聞くと、鈴木さんが特に繊細だっただけなのでは、という疑問も湧いてくるかもしれないが、そうではない。準グランプリに輝いた中山柚希さん(総合文化政策学部3年)は、予選本番当日の開演直前に、過呼吸で倒れたのだという。

「4か月の間、とにかく上を目指さなきゃ、というプレッシャーで日々キツかったです。特に私は、本番当日、みんなで踊るために使う予定のAKB48のコスプレの衣装を、電車の網棚に置いてきてしまったんです。また、たくさん友達が応援に来てくれたんですが、会場がいっぱいで入れない、っていうメールもどんどんときて、もうパニックになってしまって……」(中山さん)

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ダンス経験者の中山さんは、最もキレのあるダンスを元気に披露。その衣装が当日に用意されたものだとは知る由もなかった

 中山さんは、本番ではなんとか持ち直し、後輩に急いで秋葉原まで行って買ってきてもらった新たな衣装で、元気に踊れたという。

 若い女の子たちが、こうも精神的に追い詰められながら、出場するミスコンテスト。もちろん、それは青学に限った話ではないのだが、鈴木さん自身は、ミスコンテストをどう捉えているのだろうか。

「まさにAKB48の総選挙を見ているような、残酷さがあるな、と思いました。特に青学は、6人の候補者のうち、3人が初日の予選で落とされて、翌日の決勝戦には出られないので。お客さんはどんな目で見てるんだろう、って怖くなったりもしました」

 と、客観的にミスコンを分析する目も持つ鈴木さん。出場前には、高校時代の苦い思い出が蘇えり躊躇したとのことだったが、以前より大きな『グランプリ』の称号を手にしたことで、目立ってしまうことへの苦痛はさらに大きくなるのでは?

「今回のミスコンの期間の後半、急に、不特定多数に好かれなくていいや、ってふっ切れた瞬間があったんですよね。もう、無理に飾らないで、自分をそのまま出していけばいいかな、って。今まで考えたこともなかった、アナウンサーという選択肢も出てきて、強くなったのかな、と思います」

 ミスコンは、若い女子たちが多くの好奇の目に晒されるシステムで、その傾向はネットの進化とともに、より強くなっている。その結果、鈴木さんの言うように、ときに残酷でもあるほど、彼女たちを痛めつける。

 だが、痛みを知ることで、人の共感の幅は広くなる。決して嫌な意味ではなく、7月の時点よりも、確実に強くなり、結果、外見だけではなく、人として魅力的になっている鈴木さんがそこにいた。19歳という若さで、大きな成長を余儀なくされた鈴木さんの今後が、怖いほどに楽しみである。 <取材・文 霜田明寛>




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