東電OBのシニア決死隊員「東電ともう利害関係ないから何でもできる」
「子や孫を被曝から守りたい」と、「福島原発行動隊」(シニア決死隊)の有志が動き出した。“本丸”である福島原発での作業を待ちわびながら、除染につながる草刈り作業に汗を流したシニアたちの素顔に迫る。
◆福島原発での作業という“本丸”に近づきたい
「放射能に汚染されたがれきの撤去をすることを考えて、フォークリフトとバックフォー(パワーショベル)の免許を取りにいったんですよ」と柔和な表情で控えめに話す飯島定幸さん(61歳)は、東急電鉄の元駅員。現役のころから、山形県新庄市の有機農業グループが生産した米と大豆を消費者に届けている。震災地・宮城、岩手の復興支援も続けているという。
「自分の体力や技術で何ができるかを考えながら、草莽の志としてやっていきたい」
作業服がよく似合う所信行さん(63歳)は、東京電力火力発電所部門のOBで危機管理のプロ。「年寄りってわりと純粋なんですよ。東電とももう利害関係はないですから、何でもできる」と語る。
「古巣の大失態に忸怩たる思いです。事故収束に向けて、自分たち火力屋力が必要だと思っています。火力屋には水屋も土木屋もいるんだから。原発の事故処理は、あまりにもだらしない。とにかく一刻も早く海へ流出する汚染水を止めなきゃいけない。流水にセメント流したって水は止まらない。水の止め方や流出箇所の見つけ方とか、もうちょっと技術屋としてしっかりやってほしい。冷却系水循環装置でバルブの開閉やホースの水漏れが相次いだのも、過酷な作業だから失敗しているんじゃない。管理体制の問題なんです」
所さんは、99年から2年間、むつ中間処理施設(青森)の立ち上げにも加わった。現在は、「福島の現場を第一に、若い電力関係者たちとの橋渡し役をしたい」と望んでいる。
ボランティア企画者のひとり、平井秀和さんらは、「みんなで団結・結束して今回の作業をやり遂げた。福島原発での作業という“本丸”に一歩一歩近づくため、専門家の協力を得ながら、南相馬市などでも有志で除染活動をしていきたいですね」と意気込む。
9月9日には、行動隊の本隊メンバー7人が原発の前線基地「Jヴィレッジ」で開かれる東電主催のモニタリング要員研修を受けた。この研修が、シニアたちの20km圏内汚染モニタリングへの参加につながるのか、動向を注視したい。
【所 信行さん】
アインシュタインに心酔、東工大卒業後、「核融合発電」を夢見て東電に就職。「火力発電所の当直長時代に数々の修羅場を経験し、安全・危機管理の難しさを肌身で感じてきました」
取材・文・撮影/田中裕司
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