リオ最大の“スラム街”ホシーニャに住居希望者が殺到!?
「『シティ・オブ・ゴッド』は70~80年代の話だわ。今はファベーラはとても安全よ。ツアー会社もリオだけで30以上ある。毎日、大勢の観光客が見学に来てるけど、事件に巻き込まれることはない」
筆者はワールドカップが始まる数か月前、リオデジャネイロにある最大のファベーラ「ホシーニャ」を訪れた。NGOが主宰するファベーラツアーで、ガイド役はまさにそこに住むまだ10代の若い女性だった。ちなみにツアーは約5時間で料金は約3500円。ホシーニャは、リオデジャネイロ最大のファベーラで、政府の調査では人口7万人だが、ガイドによると30万人が暮らしているという。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=661040
ブラジルの治安の悪さを語るとき、決まって紹介されるのがファベーラだ。スラム街か貧民窟のことで、麻薬売買の温床としても知られ、犯罪組織の根城として恐れられている。ブラジル全土にファベーラが存在し、同国人口の6%が住んでいるという。
ツアーは、ファベーラの入口となる麓の幹線道路からスタート。ファベーラ住民専用の乗り合いバスで、のろのろと丘を登っていく。途中、荷台に観光客を満載したオープントラックに追い抜かれる。ジープやトラックに乗ったまま、ファベーラを見学するツアーが人気を博しているが、ガイドは「我々は動物園の動物ではない。住民もああいう見せ物的なツアーには怒っている。見学するなら、ちゃんと歩いて、お店でお菓子でも買ってお金を落としてほしい」と言った。
丘の頂上付近のポイントで下車し、ほかのツアー客と合流をして街歩きがはじまった。坂道や路地を歩き続ける。想像を絶する貧困さを予想していたが、猥雑な途上国のダウンタウンといった程度で、そこまで酷いものではない。街を歩く住人も身なりは普通だし、商店やコンビニもたくさんある。ただし、ファベーラならではの不便なものも多い。
「一番は水。水道が通ってないので、給水車が週に1~2回ほど来て各家の給水タンクに水を供給する。あと、電柱を見てみて。どこも電線がたくさん絡みついて分岐してるでしょ。みんな各家庭に繋げて盗電してるのよ。だから電力供給は不安定。そうそう、最近、問題になってるのはゴミ。地域ごとにゴミ廃棄場があるけど、どこもキャパオーバーで、清掃車の回収も滞りがち」(ガイド)
しかし、ファベーラでの暮らしは皆が皆、そこまで悲惨ではない。ガイドの祖父は、もともと貧しいノルデスチ(ブラジル北東部)から職を探しにリオにやってきたここに住み着いたというが、今や悠々自適に家賃収入で暮らしているらしい。ホシーニャに関しては、住みたい人も多く、家賃も意外に高い。みすぼらしい古屋でも数千万円で売買されるという。なぜ、ファベーラに住みたがる人がいるのか。彼女の答えを聞いて納得した。
⇒後編『【W杯リオ発】ファベーラ住民が語る「マフィアの真実」』に続く https://nikkan-spa.jp/661059
<文・写真/バーナード・コン(本誌特約>
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ