「ありのまま」な自分が好き!“ファッション”オーガニック女の困った生態
ありのままでいることを良しとし、自然派なものに走る女性は少なくない。ただ、“オーガニック”がブームを超えて一つのジャンルとして定着した昨今、「ありのままの自分」に酔っているだけの“ファッションオーガニック女”というのも存在する。雑誌などの情報でその気になり、中途半端にオーガニック生活をたしなむ人たちのことだ。
形から入り、見た目だけオーガニック系になれれば満足だというTさんは、シワシワの服を買い集めるのに熱を入れている。
「ここ一年ほど、麻のブラウスばかり着ています。友人には『シワシワだ』とバカにされるのですが、いい素材の服を着たほうが気分が上がりますし」(23歳女性・大学院生)
ちょっとしたことがきっかけになることもある。
「『かもめ食堂』のDVDを観たあと、妻がいきなりロングヘアをばっさり切ってマッシュルームカットにして『お金を貯めて北欧に行く』と言い始めました。それまではちょいギャルの古着系だったのに、今ではすっかり布をたくさん着こんでストールを巻いています」 (33歳男性・コピーライター)
身につけるものだけではなく、食べ物も変化するのが「オーガニック」だ。母や妻のオーガニック志向で、振り回されている家族たちにも話を聞いた。
「妻がオーガニックに凝ってから夕飯のおかずが、野菜をすりつぶしたものばかり出るようになった。噛まなくて良いものって老人の病院食みたいだから切なくなるんだけど、機械で懸命につぶしてるのを見たらそんなこと言えない。飽きることを待つのみです」(35歳男性・アパレル勤務)
「ある日、朝食の食パンが変だった。今までは普通の食パンだったのに、嫁がオーガニックに凝り始めたようで、『青のりを練り込んだ天然酵母食パンを焼いたんだ♪』と。俺は上にママレードジャムのせるのが好きなのに……なんで青のりなんだよって思った」 (46歳男性・製造業)
「僕の妻は3年くらいずっとオーガニックに凝っていて、食事は何かと実が浮いています。スムージーやポタージュ、玄米ご飯の上にちょこんと実が乗っている。しかも無味。そして同じ実であっても、ミックスナッツはオーガニック的にはNGなようで、食べたら塩分過多と怒られる」 (40歳男性・飲食店勤務)
話を聞いていると、「食べ物にはこだわるけれど、服の繊維にはこだわらない」、「化粧品はオーガニックにこだわるけど、それ以外は気にしていない」など、オーガニック志向と言えど、ある一つのジャンルに対してのみ。あくまでも、健康体になりたいという情熱があるわけではなく、「オーガニックである私」「練り込んだパンを作る私」が楽しいだけなのだ。人生を豊かにする趣味や習い事の一種と捉えて、生暖かく見守るよりほかなさそうである。 <取材・文/もよもよ>
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