第5章:竜太、ふたたび(11)

第5章:竜太、ふたたび(11)

 痩せているみゆきの乳房は、竜太が想像していたとおり小さかった。

 肋骨の浮いた胸に、打撲でちょっと腫れあがったくらいの盛り上がりがあるだけだ。

 その盛り上がりの中心部に、直系3センチくらいの桜色の乳輪があった。

「吸って」

 竜太がその小さな乳房に触れると、下からみゆきが言った。

 最初だというのに、ずいぶんと遠慮のない反応である。

 愛だ恋だチョーチンだというセックスでないのは、二人とも諒解済みなのだから、まあ、そんなものなのかもしれない。

 指示に従って竜太が吸い上げると、大豆くらいの大きさの乳首が、むくむくと育った。あっと言う間に竜太のごつい親指の半分ぐらいの大きさになる。

 しかも、こりこりと硬くて長い。

 たいした経験を重ねたわけではないけれど、竜太にとってこんなに長く勃起した乳首は初めてだった。

 んっ、こりゃ面白くなるかもしれない。

 竜太の掌が、みゆきのパジャマの下に潜る。

 すべすべした下腹のスロープを辿った先には、どっこい、亀の子たわし。

 じゃりじゃりとこわい毛が、一面を覆っていた。

 残念である。

 残念なのだが、ここいらへんは竜太の許容範囲だった。

 繰り返す。愛だ恋だチョーチンだというセックスではないのである。それゆえ、竜太は気持ちよく放出できればいい。

 あっち向いて、ズボッ。

 こっち向いて、ブスッ。

 もう、上から下からうしろから。

 そうであれば、不足はない。

   *        *        *         *

「田舎ってさあ、都会みたいに娯楽の場がないでしょ。だから中学の高学年になると、もうこっちばかりになってしまうの」

 短時間ながらも激しい一回戦が終わると、息を乱したままみゆきが言った。

 そんなものなのか。竜太は妙に納得する。

「こっち」とは、もちろん下半身関連事項のことである。

「セックスは楽しいし興奮して集中できるけれど、ギャンブルはもっと楽しくて興奮して集中できるんだね。いままで知らなくて、損した感じ」

「やったのか?」

 竜太が掠めてきた7万ドルのチップを、みゆきがクラウン・カジノに換金しに行った時のことを尋ねたのだった。

「だって、報酬の7000ドルはどう遣ったってもわたしの勝手でしょ」

「そりゃそうだけれど。で、勝ったの?」

「10勝4敗」

「ゴリラでベットかよ。1枚9万円相当だぜ」

「ううん、竜太さんが言ったように、1万ドル・チップを、ゴリラ9頭とおサルさん(モンキー)2匹に分けてたでしょ。だから、おサルさんの方でベットしたの」

 それでも、一手500ドル(4万5000円)のベットである。

「初めてのカジノ賭博なのに、いい根性しているな」

「7000ドルが、1万2000ドルになっちゃった。簡単なんだ」

「ああ、簡単だ。だから、怖い。やったのは、バカラか?」

「ルールはわからなかったんだけど、やっぱりカラー・チェンジしたテーブルでのゲームにした。ツラが出ている卓には人が集まる。ツラが切れれば人は去る、って竜太さんは教えてくれたよね。だから、人が去る前の手を狙えばいいんだと考えたの」

「いつツラが切れるとわかるのさ?」

「そんなこと、わからない。でも、わからないけど勝利した」

 地方都市にはどこにでもいる女子大生みたいだ、と竜太はみゆきのことを思っていた。

 しかし、ひょっとするとこいつはいいタマになるのかもしれない。

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PROFILE

森巣博
森巣博
1948年日本生まれ。雑誌編集者を経て、70年代よりロンドンのカジノでゲーム賭博を生業とする。自称「兼業作家」。『無境界の人』『越境者たち』『非国民』『二度と戻らぬ』『賭けるゆえに我あり』など、著書多数。