筋膜リリースで身体のバランスを整えると「重力にサポートしてもらえる体」になる

 今、ちまたで話題の「筋膜リリース」について、前回、「筋膜はリリースしたら「統合」しなさい――元に戻りにくい身体を作る“ロルフメソッド”とは」で、米国の生化学者アイダ・ポーリン・ロルフ博士によって開発されたボディセラピー「ロルフメソッド」を紹介したところ、多くの読者から反響があった。

 そこで、今回はロルフメソッドの具体的な施術法について、前回に引き続き、米国GSI認定ロルフ構造統合メソッド・プラクティショナーの吉澤直子氏に話を聞いた。

(米国GSI認定)ロルフ構造統合メソッド・プラクティショナーの吉澤直子氏

全身の筋膜に働きかける


 ロルフメソッドは、プラクティショナー(施術者)がクライアントさんの身体に適度な圧力を加え、筋膜という全身に張り巡らされている結合組織に順序立てた方法で働きかけます。それによって、「重力の中で構造的に最善のポジションをとる身体に進化し続けていく」ことを目指します。一言で言えば、筋膜リリースを「トータルコーディネート」して身体のバランスをアップグレードさせることにより、重力と闘う代わりに「重力にサポートしてもらえる体」にすることです。

 ロルフメソッドは表のように10回のセッションで成り立っています。1回1時間程度のセッションを、1週間~2週間に1回程度のペースで進めていきます。各セッションは最終的に身体の統合が完結するように施術されます。

 施術はゆっくりと、時間をかけて、その人に合わせて行います。クライアントさんは、施術をただ「受ける」のではなく、プラクティショナーの手助けのもと、主体的に自身の身体に働きかけます。こんなことを言うと「何をさせられるのだろう?」と不安に思われるかもしれませんが、大丈夫です。例えば横になった状態でプラクティショナーの誘導のもと、小さく膝を曲げたり伸ばしたりするような簡単な動きをするだけです。

筋膜リリースするだけではなく「統合」するのが大切


 ロルフメソッドの最大の特徴は「統合」して終わることです。ただバラバラに緩めてサヨウナラ、ということはしません。新しくなった体を「ちゃんと使えるようにまとめて」から終わります。

 筋膜は、その中に無数の神経細胞が分布されており、それ自体に知覚があるということが研究によって証明されています。整えられ、バランスを取ることができるようになった筋膜は、私たちの思考などよりもはるかに賢く、重力に反応して、その時、その人の構造にとって最善のポジションに私たちを導くようになるのです。

バランスを失った身体にとって「重力」は敵になる


 それに気づくには、まず、自分の体が“今”どういう状態なのか“感じる”ことが必要になってきます。普段ご自身が「重力」の中にいることを意識して生活されている方はかなりの少数派ではないかと思われますが、地球上で生活する私たち人間の身体は常に「重力」に多大な影響を受け続けています。人間の身体は生まれた時から休むことなく地球の重力によって、とてつもない力で引っ張られ続けているのです。

 私たち人間のほとんどがバランスを失った身体の持ち主であるとアイダ・ロルフ博士は言っています。人間が身体のバランスを失う理由は人それぞれ様々ありますが、バランスを失った身体にとって、重力は押しつぶそう、引きずり倒そうとしてくる敵になってしまいます。重力という勝ち目のない相手を敵に回して日々闘っていれば、その結果として、年月を経ると腰や背中の激しい痛みや、慢性的な疲労感に悩まされるようになってくるのは明らかです。

 そのような重力と闘い続けた結果起こった痛みに焦点を当てても、一時しのぎにしかなりません。それでは、また、バランスを失ったままの身体で、巨大な敵との闘いの日々に戻っていくようなものではないでしょうか。

重力を味方につければ「いい姿勢でいることが楽になる」


 身体が整い、バランスが取れてくると、重力の中に存在することが楽になり、それまでよりも、少量のエネルギーを使うだけで、今まで困難に思えていたことが比較的簡単にできるようになります。疲れる姿勢(重力を敵に回す姿勢)にも気づけるようになるので、あえて重力に押しつぶされるような姿勢は取りたくなくなるでしょう。また、身体はより柔軟でいることができ、呼吸も楽になるので、さまざまな方面でのパフォーマンスの向上も期待できます。さらに、身体が安定することによって、心の状態にも変化が訪れるということは誰でも容易に想像することができると思います。

身体が重力に対してより効率的にバランスされる


 ただし、ロルフメソッドは治療、医療行為ではありません。“結果として”不調が改善することはよくありますが、それを目的とはしていないのです。痛みやコリなど、問題の部分だけを治そうという意図で働きかけることはありません。あくまでも全身を視野に入れて働きかけます。なぜなら、身体の一部分だけを変えても、重力の中で生活すると、すぐに元のバランスに戻ってしまうからです。

 ロルフメソッドは、10回それぞれの回のテーマを扱いながら、それぞれのセッションの間に少し日にちをおくことで、新しい身体の状態を重力に適応させつつ進めていきます。そのため、経過の写真を撮ったとき、セッション直後より、1週間後や2週間後の方が変化していたりすることもあるのです。その10回のプロセスに伴って段階ごとに、身体の前と後ろ、左と右、上と下、内と外のバランスが整ってきて、さらに、その人の全身の構造のバランスが、それまでよりも重力に対して、より効率的なバランスをとるように変化していくのです。

なぜロルフメソッドの施術は元に戻りにくいのか


 私たちプラクティショナーは、クライアントさんの身体が今まで気づいていなかった選択肢もあることを提示、提案するという形で変化のきっかけをつくるお手伝いをし、主体であるクライアントさん自身の生命力の選択を尊重し見守ります。いくら良いものだと思っていても、それを必要としていない人に押し付けるようなことはしません。もし、そんなことをしても、より良い変化は起こらないでしょう。ロルフメソッドのより良い成功には、他人任せではない、クライアントさん自身の自主的な意思、ご自身の体に対して責任を持っているという意識、変わりたいと思う気持ちが必要なのです。

 ロルフメソッドの実際の工程やアプローチの方法はクライアントさんによって、またはプラクティショナーによっても全く同じということはありえません。たとえば遠足に行くことに例えると、それぞれが別々の違う出発地(それぞれ違っている身体の状態や環境、個性)から、自分で道を見つけて(それぞれの人に合ったやり方で、その時点で必要なことを)、同じ目的地(同じ形という意味ではありません)に向かって歩いていくような感じです。

 その旅の結果として、人によっては実際に身長が高くなったり、スタイルが良くなったりということも良く見受けられますし、不快な感覚や痛みが緩和される方もいらっしゃいます。その他には、固かった身体が柔軟になった、重たいと感じていた体が軽く動けると感じるようになった、動きがスムーズに流れるようになった、よく眠れるようになった、イライラしなくなった、疲れにくくなった、足元が安定してふらつかなくなった、噛み合わせが改善した、肺活量が増えた、活動的になった、自信が持てるようになった、などの方がいらっしゃいます。(結果は人それぞれなので、必ずこのようになるという保証は出来かねます。)

 ロルフメソッドは身体全体の調和を目指します。そしてその変化は、クライアントさん自身の、「潜在意識下の知性による選択」による、つまり他人に力づくで、勝手に変えられたのではなく、自分の身体の組織がそうなろうと選択した変化なので、ロルフメソッドの変化は元に戻りにくいとも言えるでしょう。

<取材・文/日刊SPA!プラス編集部>

【吉澤直子(よしざわ・なおこ】
ロルフスピリット主宰。米国GSI認定ロルフプラクティショナー。20代の時にダンス、ヨガ、太極拳などを始めたことをきっかけに、腰やひざなど身体を痛めることが増え、さまざまな治療に通う傍ら、身体の使い方や構造についての探求を続ける。ヨガインストラクターとしても働くが、その後、腰・ひざ痛が悪化、ひどい痛みに苦しみながら対症療法を続けるが、どれも一時しのぎでしかなかった。その時はこれが一生続くのかと、痛みと悲しさにやりきれなさを感じていたが、そんな中「赤ちゃんの頃のような体に戻れる」という、うたい文句に惹かれ、半信半疑ながらも、もしそうなったら夢のようだな。と期待をもちつつロルフメソッドを受け、プラクティショナーの方の伝えてくださる、今まで自分の思ってもみなかったような斬新な視点からの言葉を聞いて感銘を受け、「自分が長年探し続けていたものはこれだったんだ」と確信する。その後、自身もロルフメソッドを学び、トレーニングの課程を修了、GSIのプラクティショナーとしての認定を受ける。現在は、都内で施術を行っている。
もっと詳しく知りたい方、予約などはウェブサイト「ロルフスピリット」まで。




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