消費税を増税しても景気悪化はないと述べた専門家たち(プライマリー・バランス死守は亡国への道④)

消費税アップで景気は悪化した

消費税アップで景気は悪化した

専門家の多くが消費税増税を支持した

 5%から8%への消費税アップが翌年に控える2013年、政府は国民からの意見聴取として有識者60名の意見を聞くことになった。その有識者のうち、エコノミストなどの専門家がどのような発言をしていたのかをここで紹介しよう。  まずは、東京大学大学院経済学研究科の伊藤隆俊教授。彼は経済学会では中心的な人物であり、消費税増税に関してこのように発言したことを日経新聞が報じている。「引きあげても景気の腰折れやデフレ脱却の失敗につながることはない」  土居丈朗慶応義塾大学経済学部教授は「消費税率を上げても大きく景気が悪くなるということはない」と。そして、経済学会の重鎮・吉川洋東京大学大学院経済学研究科教授は次のように答えている。 「私は消費税率は予定通りに引き上げるべきだという意見を述べた。…日本経済の現状は基本的には順調。昨日色々な経済指標も出たが、日本経済の成長プロセスはかなり底堅いとみているとの意見を述べた。(前回消費税を引き上げた)97年、98年は大変不幸な状況だったが、(景気悪化の)主因は消費税ではなく金融危機の方が大きな問題だった」  それ以外にも、「経済環境、物価環境の両面から、実施するに十分な状況にある」と主張していたのがアール・ビー・エス証券会社のチーフエコノミストの西岡純子氏。マスコミでも頻繁に登場する大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏も、「景気の腰折れを懸念する人もいるが、私自身は今の経済状況はアベノミクスによって着実に改善していると判断。経済状況は1997年とは違い、増税は可能である」と述べていた。

景気悪化を主張した2人の専門家

 一方で、消費税増税に関して意見聴取した60名のうち明確に反対意見を述べたのは6名に過ぎなかった。6名の反対者のうち、専門家は2名だけしかいなかった。そのなかの一人である片岡剛士三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の発言だ。 「消費税を予定通り引き上げると、2014年度の実質成長率が1.3%くらい増税によって押し下がり、0%台になる。海外経済の動きによっては容易にマイナス成長になる」    反対意見のもう一人は、昨年他界された宍戸駿太郎筑波大学名誉教授であった。 「(消費税引き上げは)凍結だ。いま上げるとアベノミクスが腰折れになる。増税は当面やめて、むしろアベノミクスで成長を高め、上げ潮戦略を採るべきだ。成長を高めて所得を増やせば自然増収がいっぱい出てくる。消費増税は終わってから考えた方がいい。完全雇用に近づくまで消費増税はやめておくべきだ」 「私のシミュレーションでは7年後、2020年には完全雇用を達成し、そこまでの経済成長が名目で7%、実質4%くらい。税金がたくさん入ってくるから増税の必要がないということだ。社会保障の財源も十分出てくる」  60名の有識者による意見聴取を踏まえ、2014年4月から消費税は予定通り5%から8%へと引き上げられた。消費税を上げても景気が悪くなることはないという専門家の圧倒的多数の予測に対して、結果はどうだったか。  消費増税前の駆け込み需要の反動を伴っていたとはいえ、内需が大きく落ち込んだ。2014年度の実質成長率は、マイナス0.44%まで落ち込んでしまったのだ。それは、先に紹介した片岡剛士氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)の意見が、極めて正確なものだったことを証明していた。 (育鵬社編集部A)
プライマリー・バランス亡国論

「財政赤字は絶対悪」との思い込みを各種データから覆す、目からウロコの日本国民必読の書。

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