デフレは社会インフラの維持を困難にする(プライマリー・バランス死守は亡国への道⑦)
(3)産業競争力や労働生産性が低下する
「昨今、とかく『労働生産性の向上』や『産業競争力の強化』が必要だ、と言われるようになりました。ですが、『生産性』が落ちて『競争力』が低下している最大の原因もまた、デフレなのです。『産業競争力』の最大の源泉は、各企業の『投資』。しかし、デフレであれば当然『投資』は冷え込みます」 「しかも、『PB制約』があれば『政府』もまた投資しなくなります。実際、デフレになってから、日本の政府による投資は半分以下になりました」 「このままでは、私たちの社会を支えるインフラの『維持』すら不可能となります。そうなれば、私たちの社会の国際競争力はさらに一気に凋落するでしょう。さらには、デフレになれば『科学技術力』も低下します。これが日本の産業競争力を根底から衰弱させます」 PB制約が結局デフレを導くことになり、それによって民間投資も冷え込ませる。それは同時に、政府投資をも冷え込ませてしまう。これが引いては、科学技術力の低下も招き、これらの総合的な効果によって競争力を低下させてしまうとの主張だ。さらには、「労働生産性」が低いのも、デフレが原因だと藤井教授は力説する。 「そもそも労働生産性は、『労働1時間あたりが生み出した付加価値の合計』。そして、付加価値の国民全体の合計がGDP。したがって、GDPが減れば労働生産性は下がって、増えれば上がる、のは当たり前です。だから、PB制約がデフレを導き、GDPの縮小をもたらし、最終的に、日本の今の低い労働生産性の低下をもたらしているのです」 「つまり、経産行政で今、最も重視されている『労働生産性』や『産業競争力』を、PB制約は実に様々なルートを通して凋落させているのです」(4)地方が衰退する
マスコミに踊る「シャッター街」や「地方消滅」というキーワード。これらが象徴されるように、日本各地で地方衰退がますます深刻になっているのだが、こうなってしまうのには二つ原因があると藤井教授は述べる。 「第一の原因は、デフレ。デフレだから皆、相対的にビジネス環境がよい、都会に人も企業も流れていくのです。結果、デフレになれば東京一極集中と、地方の衰退が同時に加速していくのです」 「もう一つの原因は、地方のインフラ不足。新幹線も高速道路も、首都圏、三大都市圏、太平洋ベルトには豊富に作られていますが、地方部にはほとんど作られていません。これが、地方の衰退を加速させているのです」 PB制約がデフレ化を促すだけでなく、地方に対するインフラ投資の抑制も導く。このダブル効果で、PB制約は地方を疲弊させ続けるのだという。 (育鵬社編集部A)
『プライマリー・バランス亡国論』 「財政赤字は絶対悪」との思い込みを各種データから覆す、目からウロコの日本国民必読の書。 |
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