デフレが続くと国防力も低下する(プライマリー・バランス死守は亡国への道⑧)
(5)国防・防災力が下がる
「PB制約は、直接的な政府活動を著しく制約します。結果、PB制約のせいで、防衛投資や、防災対策・強靭化投資が不十分にならざるを得ません(とりわけ、社会保障費が拡大の一途を続けている今日、PB制約による防衛・防災投資の抑制効果は深刻です)」 「結果、PB制約のために、巨大災害や極東有事などが生じた時、大量の人命が失われ、二度と回復できないほどの深刻な被害を受ける危機が高まっています。つまり、PB制約は、日本が今までのように、『主要先進国の一員』で存在し続けられないような危機を拡大させているのです」 「しかも、日本の巨大な経済力や、今よりも大きな国防力があれば、日本への国際的協力や連携同盟要請が拡大していくと同時に、仮想的な敵国からの攻撃リスクを抑止していくことも可能となります」 「しかし、PB制約によって、デフレ化して経済力が衰退し、国防力も縮小していけば、仮想敵国からの攻撃リスクはさらに拡大します。例えば、日本の経済力が中国よりも圧倒的に大きかったデフレ化前の時代には、尖閣問題は皆無であったことを思い起こせば、相対的国力と有事リスクは直接関連していることは明白です」 つまり、PB制約は軍事的な国防力を低下させているということだけでなく、むしろ有事を呼び込むリスクを拡大させているということなのである。(6)文化が衰弱する
「PB制約は、こうして私たちの命や財産の安全保障を棄損しているのみならず、私たち日本人の文化や教養も毀損しています。そもそも文化もまた、「投資」によって維持され、発展していきます」 「しかし、PB制約によってデフレが継続すれば、官も民も投資を縮退させますから、文化が衰退することは避けられません。特に、PBによって直接活動が抑制されている政府の文化活動は大いに縮退します」 ことわざに「衣食足りて礼節を知る」とあるように、デフレで衣食が不十分な状態になれば、人は金儲けのために礼節を、さらには、文化や教養が蔑ろにされてしまうことになると藤井教授は強調する。 「例えば、この報道は、そうした日本の文化や教養力の衰弱を端的に象徴するものと言えるでしょう。つまり『PB制約』は、私たちの経済的豊かさや安全保障を毀損しているだけでなく、日本人が日本人であるための文化や教養すら、毀損し始めているのです」(7)日本が後進国化する
「PB制約を日本政府が持ち続ければ、デフレは確実に継続します。その結果、このままデフレが続けば、かつて2割弱もあった日本のGDPの世界シェアは近い将来、メキシコ程度の水準にまで凋落することは避けられません」 「同時に、産業競争力も生産性も、はては文化の力それ自身も衰微の一途を辿っています。これはつまり、日本が近い将来に「後進国」の地位に凋落することを意味しています」 現在、日本では自然災害のみならず軍事的危機に対する強靱性も衰弱している。したがって、かりにひとたび「有事」が生じれば、近い将来、一気に「後進国」に凋落することも十分に予期されると藤井教授は言い切る。 このように、藤井教授によるPBが日本の「亡国」を導く制約であるか、その理由を7つ紹介した。しかしながら、現在、財界を中心に消費税の10%増税を実施するような発言が相次いでおり、日本経済が本当にデフレから抜け出せるかは予断を許さない。藤井教授の主張の詳細を知りたい方は、ぜひ『プライマリー・バランス亡国論』をご一読いただきたい。 (育鵬社編集部A)
『プライマリー・バランス亡国論』 「財政赤字は絶対悪」との思い込みを各種データから覆す、目からウロコの日本国民必読の書。 |
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