路上から武道館へ行く噂のシンガー・宮崎奈穂子の直前路上ライブを直撃
「路上から武道館へ」
このキーワードで注目を集めているひとりの女性がいる。宮崎奈穂子さん。自作の歌を路上で歌い、8万枚以上もCDを手売りでさばいた。いわゆるメジャー歌手じゃない彼女が、今夜11月2日、武道館で単独ライブを行う。
このCD不況に無名な歌手が……。取材班は、その実態を知るべく、彼女の路上ライブを直撃することに。
19時頃から渋谷駅前で行うと聞いていたので、やや早めに向かったところ、15分ほど前に大荷物を抱えた宮崎奈穂子さんが現れた。小さなカラダに信じられないほどの大荷物。渋谷の喧騒のなかでも一際目立っていた。しかし、スタッフらしき人は見当たらない。誰の助けもなく、すべてひとりで場所を決め、移動しているという。しかも電車移動!
よいしょ、と場所を確保すると、黙々とセッティングを始めた。手作りの看板、そしてチラシ、手売りするCDなども準備する。
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彼女のファンと思しき男性が数人チラホラいるだけで、まだそれほど集まりはなかったものの、おもむろにマイクの位置を整え、歌い始めると、瞬く間に人々が足を止めた。
演奏曲は、現在の彼女のことをダイレクトに伝えられる「路上から武道館へ」。多くの人に知ってもらうために、客層のほとんどが新規だった場合、ひたすらこの曲を演奏するそうだ。
演奏を終えると、お客さんに丁寧にお礼を伝え、すぐさま一人一人にチラシを配る。そして、驚いたのが、1枚3000円もするCDアルバムをお客さんが次々と買っていくのである。なるほど、この勢いだとたしかに数年で8万枚を売り上げるのは納得である。
◆警官の出動は日常茶飯事
手売りが一段落すると、また彼女はキーボード前に戻り、演奏を始める。そして歌い終えるとまた手売り。この繰り返しだ。
ところが、あまりの人の多さに通行にもやや影響が出始めたのか、先ほどまではスルーしていた警官の様子がちとおかしい? こちらも心配していると、3ステージ目、やはり警官からストップがかかってしまった。なにやらサインを書かされ、機材を片付け始める)この場合、ここで終了だという。
この日の路上ライブを終えた宮崎さんに直接お話を伺うことに。
宮崎「基本的には、路上の許可は取れないので、通行人の方の通報があったらおまわりさんが来ちゃいますね。激しく怒られることもありますが、『よし、次行こう』って立ち直ります。で、だいたいは別の場所に移ってライブを再開しますね。その繰り返しです」
――なんだか、怒られると一度で凹んで、もう路上でやる気持ちが失われてしまうそうです……。そこまでして続けられる路上ライブの魅力を教えてください。
宮崎「ライブハウスとかと違って、私から会いに行けるところです。はじめましての人とかに聞いてもらえるところですね」
――毎日、毎日、路上で歌い続けるのは並大抵のことじゃないと思います。夏は暑いし、冬は寒さが厳しいし。なによりそんな重い荷物を毎日毎日……。
宮崎「私にとって路上ライブは、OLさんが出勤して退社するようなスタイルと同じなんです。朝10時から夜の10時までぶっ通し歌うこともありますね。もともと外見にコンプレックスがあった学生時代に、食堂で歌ったときに周りの子たちから『よかったよ』って言ってもらえたことが原動力に繋がっていますね。こんな私でも音楽だったら、劣等感なくできるって。私にあるのは努力と根性くらいなんです」
――非常に勇気が持てます! これから全く別のステージである武道館で歌うわけですが、心境と、これからのことを教えてください。
宮崎「心境……なんだかもう、『どうしましょう』ってことしか言えないですね。でも、みなさんに伝えたいメッセージはたくさんあります。私自身の今後は想像つかないけど、心に決めているのは、武道館が終わった次の日も路上で歌いたいです。私はシンガーソングライターとしての活動も路上が初めてだったし、歌手になるためにいろんなことに挑戦してきたけど、結果的に続いたのが路上なので、何よりの活動場所になっているんです。おばあちゃんになるまで路上ライブを続けてみたいですね! 70~80代になっても路上で歌うっていいですよね(笑)」
そんな彼女は、今夜、武道館に立つ。今後も路上を続けたいと宣言する彼女、明日からは、”会いに行ける武道館シンガー”に肩書きが変わることだけは確かだ。 <取材・文/小野麻衣子 撮影/石川高央>
- キーボードや機材、そして手売りするCDなど、およそ50キロもの荷物を毎日運んでいる
- 看板には大きく「武道館」の文字が!※取材日は10月30日



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『路上から武道館へ』 普通の子が、大きな夢を叶えた方法とは? ![]() |
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