更新日:2021年08月16日 07:40
ライフ

音楽CDを「捨てたくない」ワケ。サブスクが便利なのはわかってるけど

 あらゆる年代の人がいる職場はまさに“世代のルツボ”。特に社会に出て間もない人にとって、過重労働が社会問題になっている時代にあって嬉々として“徹夜仕事”をしたり、なんでも電子化、レンタルできる世の中で“モノにこだわる”40代以上の世代は奇異に映るかもしれない。  社会の文脈的に“ロスト”されてきた世代は、日々どんなことを想い、令和を楽しもうとしているのか。貧乏クジ世代と揶揄されつつも、上の世代の生態をつぶさに観察し、折衝を繰り返してきたロスジェネ世代の筆者ふたりが解説していく。

90年代、お小遣いをはたいて買った大量のCD達の行方は?

losgene_5「子供が一人増えたのをきっかけに、郊外のマンションに引っ越すことに。そのときに問題になったのが集めに集めたCDの数々。置いておける自分の書斎を作れるわけでもなく、妻からは完全に邪魔者扱い…。そろそろ涙を飲んでサヨナラなのかな…」(47歳・家電メーカー)  スマホなどのスマートデバイスの普及とともに、Spotifyなどの音楽サブスクサービスが定着。こうした問題に直面する方は多いのではないでしょうか。特に『モノを愛する』ロスジェネ世代以上の方々にとっては結構大きな課題で、若い頃になけなしのお金で買った愛すべきCD達を思い切って一掃できるような思い切りのある方ばかりではないはずです。20〜30代の方々からすると「なんでそんなに拘るの?」と疑問視されることもあるかもしれません。

CDには思い出のあれこれが詰まってる

 特にロスジェネ世代のCDに対する寵愛の度合いは、他の世代より強いかもしれません。その理由は彼らの「音楽メディア変遷体験」にあるとみています。幼少期は、団塊世代である親達が持つレコード盤が主流でした。それらはすべからくカセットテープへと録音され、カーステレオなどで再生。そこまでが音楽視聴のワンセットで、「大切に収集するレコード、聴くときはカセットテープ」というのが原体験なのです。  その後、小学校高学年〜中学生頃になるとようやくCDが市場に出回り始めます。TSUTAYAなどのレンタルショップでもレコードとCDが両方陳列していたりもしました。その後、MDなどの登場もありましたがそれほど定着もせず、彼らの多感な時代、90年代はもはや「CD一強時代」でした。「1990年代の音楽業界とその後、そして未来に関する考察」(明石昌夫著)によると、「1980年には2億枚に登った」レコードの売上は、80年代末にCDに変わっていき「1998年には4.5億枚を突破した」というから、実に20年間で市場が倍以上に膨れ上がったとも言えます。  ミリオンヒットしたCDも多数で、小室哲哉らプロデューサー勢がヒットメーカーとして頭角を現したのもこの頃です。Mr.Children、宇多田ヒカル、PUFFY、シャ乱Q…あらゆるジャンルのミュージシャンが次から次とヒットを飛ばす時代。それらをパッケージしたのがCDでした。こうしたモノ基点のメディア環境を青春時代に体験しているからこそ、冒頭のような悩みに直面してしまうわけです。思い出のあれこれが詰まったアイテム、それがCDなのです。
次のページ
CDとサブスク「どっちが音質いい?」問題
1
2
数々の雑誌を渡り歩き、幅広く文筆業に携わるライター・紺谷宏之(discot)と、企業の広告を中心にクリエイティブディレクターとして活動する森川俊(SERIFF)による不惑のライティングユニット。 森川俊 クリエイティブディレクター/プロデューサー、クリエイティブオフィス・SERIFFの共同CEO/ファウンダー。ブランディング、戦略、広告からPRまで、コミュニケーションにまつわるあれこれを生業とする。日々の活動は、seriff.co.jpや、@SERIFF_officialにて。 紺谷宏之 編集者/ライター/多摩ボーイ、クリエイティブファーム・株式会社discot 代表。商業誌を中心に編集・ライターとして活動する傍ら、近年は広告制作にも企画から携わる。今春、&Childrenに特化したクリエイティブラボ・C-labを創設。日々の活動はFacebookにて。

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ