刑務所ライブ500回超。“受刑者のアイドル”仕掛け人の信念「車と家を売って資金を捻出」
2000年以降、「受刑者のアイドル」として刑事施設などで精力的に慰問活動を続けるアーティスト・Paix2(ペペ)。500回以上のプリズンコンサートを行い、その功績から3度の法務大臣表彰などのほか、2022年には内閣総理大臣賞、その翌年には天皇陛下主催の春の園遊会にも招待されるなど、活躍目覚ましいベテラン歌手だ。今年に入ってからも、『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日)でその異色の経歴が紹介されるなど、注目を集めている社会派デュオである。
社会派デュオ――だが彼女たちをよく知る人物にいわせれば、「Paix2とはMegumi氏とManami氏の二人だけを指すのではない。あくまでPaix2は3人」とのことだ。20年以上の長きにわたって彼女たちをアーティストとして育てあげ、まったくコネクションのないところから全国の矯正施設でコンサートを行えるまでに法務省や受刑者たちからの信頼を勝ち得た敏腕プロデューサー・片山始氏。彼がいなければ、今日のPaix2はない。
数回程度の慰問ならいざしらず、長年にわたってなぜ受刑者たちのために歌い、矯正施設を主戦場に選んだのか。その理由を問うと、片山氏の生い立ちからうかがえる思いがみえてきた。
首を傾げながら鼻にしわを寄せて、片山氏は「取り上げてもらえるほど立派な人間じゃないんですが」と照れた。還暦もとうに過ぎたであろう氏の声には張りがあり、爽やかさと泥臭さが綯い交ぜになった、不思議な印象を持つ。なぜPaix2という形にこだわってここまでやってきたのか、率直に聞いた。
「1998年、当時大手レコード会社に勤務していた私は日本縦断選抜歌謡祭を主催していました。その鳥取県大会にエントリーしてきたのが、彼女たちです。MegumiもManamiもグランプリなどは獲れなかったのですが、とても印象に残りました。勉強家で生真面目なMagumiとマイペースで自由な魅力を持つManami、この2人の掛け算は面白いと思ったんです。奇しくも大会のエントリー順で言うと、最初に申し込んできたMegumiと、締切すれすれで慌てて申し込んできたManami。性格が表れていますよね(笑)」
当時、地元の鳥取県で看護師をしていたMegumi氏から届いた手紙には、歌がどうすれば上手になれるのだろうか、などと歌唱に関する思いが熱く綴られていたという。その真摯な思いを受け止め、片山氏は2人の歌手デビューを本格的に検討した。
「現在でも芸能関係の仕事は不安定な職業の代表格ですが、当時はさらにそうした風潮が強いわけです。ましてMegumiは看護師。辞めて歌手になることに親御様が反対するのは当然ですし、理解できました。そこで、私は親御様に、地元で働きながらインディーズとして歌手活動をしてみる提案を行いました」
2人との出会いは「歌謡祭の鳥取県大会」
まずは働きながらの歌手活動を提案
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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