「今の憲法改正論議は、レベルの低い“お遊び”」倉山満氏

倉山満氏

倉山満氏

 去る5月3日は「憲法記念日」であった。この日に向けて憲法改正論議が盛り上がるのは、このところ毎年の恒例行事となっている。だが、憲政史家の倉山満氏は、昨今の憲法論議は、護憲派も改憲派も、本質論から程遠い「お遊び」に終始している――と一刀両断!

 まずは「護憲派」の矛盾から解説してもらおう。

「とにかく日本国憲法を一字一句変えたくないというカルト宗教の信者みたいな護憲派は、『人権の実現』に固執するんですが、人権を本当に実現したいんだったら、護憲なんて言ってられないはずなんですよ。例えば選挙での“1票の価値”を問う裁判でも、最高裁判所では何度も憲法違反の見解を示しているのに、判決は“警告”どまり。延々、警告を出し続けるだけで何の強制力もありゃしない。現状の日本国憲法は、単なる“人権カタログ”に過ぎません」

 目下、憲法論議の争点となっている「集団的自衛権の解釈変更」に関するスタンスでも、護憲派のトンチキぶりが目につく。

「彼らは『これまで積み上げてきた議論を、時の政権の意向で左右してよいものか』というのを決まり文句にするんですが、これまで議論を積み上げてきたのが誰かといえば、内閣法制局ですよ。つまり、選挙で選ばれていない官僚です。選挙で選ばれた総理大臣より、法制局長官のほうが偉いとでも言うのでしょうか。護憲派の皆さんは、民主主義を完璧に捨ててますよね」

 一方で、自民党の改憲案にもまったく感心はできないと倉山氏は嘆息する。

「ひとつの厳然たる事実として、自衛隊は国を守るにはあまりにも脆弱です。正規軍、予備役合わせても、同じ島国で日本より領土が小さい台湾の兵力を大きく下回っており、東アジアの中だけでも完全に“戦力外通告”。こんなことになっている理由は簡単で、軍隊を持つか持たないかで国としての合意がないからです。そんな国が日本以外のどこにあるというのでしょう? 大半の国では『持つ』という合意があり、一部にはバチカンみたいに『持たない』という国もある。あるいはコスタリカみたいに、軍隊を廃止するかわりに有事には全国民が民兵として戦うという国もある。その議論を経ずに、憲法の条文で自衛隊の名前を国防軍に変えただけで、“軍隊”になるわけがない

 条文の一字一句に拘泥する今の憲法論議では、まともな“国防”など望むべくもないのだ。

「安倍内閣について、実は増税以上の失政だと思っているのが、北朝鮮拉致被害者を自衛隊によって取り返すのは憲法上の制約で不可能だと判断し、米軍に奪還を要請したこと。自国民が拉致されているのを自力で取り返すことを許さない日本国憲法というのは、憲法典自体が立派な憲法違反ですよ。自国民を取り返せない日本国憲法そのものが異常です」

 そもそも、日本国憲法の条文を変えるかどうかで争っていること自体がおかしい――と倉山氏は強調する。

「本来、憲法(Constitution)とは、その国の歴史や文化や伝統に則った『国柄』そのものを指します。これを戦前は『国体』と呼んでいました。その中から、あえて確認のために文字にした部分が“法としての憲法”、すなわち憲法典(Constitutional code)であり、戦前の『帝国憲法』だったのです。一方の日本国憲法は、日本の国体を破壊し、日本を敗戦国のままに留めておくためにつくられたもの(詳しくは過去記事日本国憲法はデタラメ参照)。そんなゴミのような憲法をどんなに頑張って変えても、現実論なんて出てくるわけがありません。帝国憲法の改正憲法が実現したときにこそ、はじめて日本は戦後レジームから脱却できるのです
日本国憲法はデタラメ http://nikkan-spa.jp/630898

 倉山氏の新刊『帝国憲法の真実』(扶桑社刊)は、戦後「日本を亡国にいたらしめた悪の憲法」としてタブー視されてきた帝国憲法(明治憲法)を、日本の歴史・文化・伝統に則ったまっとうな憲法として見つめなおす一冊だ。憲法のあり方、政治と軍事の関係、宗教との向き合い方――という3つのテーマで、新旧憲法を丹念に比較している。「お遊び」から脱却して、本物の憲法論議を始めたい人はぜひ一読を!

【倉山満氏】
憲政史研究者。シリーズ累計20万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』に続く、「保守入門シリーズ」『保守の心得』、5月1日に『帝国憲法の真実』を発売

<取材・文/日刊SPA!取材班>

帝国憲法の真実

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