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令和初の恩赦、実際に恩恵を受ける人とは? 法学者に聞く

 10月22日の「即位礼正殿の儀」に合わせて実施された恩赦。憲法に基づく制度であり、内閣が決定して、天皇の国事行為として行われる。恩赦の実施は、平成5年の天皇陛下と皇后さまのご成婚以来の26年ぶりだ。そもそも何のためにある制度で、国民はどのように受け止めればいいのか。龍谷大学法学部教授の石塚伸一氏に聞いた。
恩赦

(画像はイメージです)

「はじめに恩赦には、一律に行われる『政令恩赦』と、個々に審査する『特別基準恩赦』のふたつがあり、さらにそのなかでも5つの種類が存在します。それは、有罪言い渡しの効力を失わせる『大赦』と『特赦』、刑期などを短縮する『減刑』、有罪言い渡しによって喪失・停止された資格を回復させる『復権』、『刑の執行の免除』の5つです」  今回の恩赦は、罰金刑となって納付から3年以上経過した人に限って、制限されている資格を回復する「復権」を実施する。政府は記者会見で「罪を犯した者の改善更生の意欲を高め、社会復帰を促進する見地から恩赦を実施する」と述べ、「過去の政令恩赦と比べると規模が小さく抑制的」と理解を求めた。

日本の恩赦にはマイナスイメージがある

 だが石塚教授は、今回の恩赦は「建前だけのもの」と語る。 「今回の恩赦は、適用条件をかなり狭めています。こんな建前だけの恩赦なら、現代に合わないし必要ないでしょう」  ならば、なぜ恩赦を実施しなくてはならないのか? 「それは、いままで明治天皇、大正天皇、昭和天皇、平成天皇が実施してきたものを、『令和天皇のときだけやらない』とはできないからです。ただ、大赦や特赦などを行うと国民の反発は免れない。そこで、被害者感情に配慮して、条件をかなり狭めたと考えられます。  そもそも恩赦とは、『時代に合わなくなった法律で過去に罰せられた人たちを救済するもの』です。1945年の戦争終結や、翌年の憲法公布に際しての恩赦では、陸軍刑法や海軍刑法違反で有罪になった人たちが大赦によって救われました。  しかし、過去には大量の公職選挙違反者の公民権回復が行われて、“政治恩赦”として批判されたのも事実です。昭和時代の恩赦は、そういう政治利用としての恩赦があったので、マイナスのイメージがついてしまったんです」  今回の恩赦で55万人が該当するという計算が出ている。罰金刑を受けると、原則として医師や看護師などの国家資格を取得する権利が5年間制限され、こうした権利が回復できるという。 「実際にこの恩赦の恩恵を受ける人は、かなり少ないのではないでしょうか。たしかに『罰金刑以上の刑に処されたものは、医師の免許等をはく奪することができる』と医師法に書いてあります。『できる』というだけで、実際に罰金刑で医師免許はく奪まで行くのは滅多にないんです。おそらく、ほとんどの人が罰金刑によって資格制限を受けていることを知らないでしょう。  もし気付くとすると、生協などの公益財団法人の理事になる機会があったとします。そうすると無犯罪証明書というのが必要になる。そこで申請に行ってみたら『刑事罰を受けていました』となったとき。そのようなケースでは、今回の恩赦の恩恵を受けますね。しかし、かなりのレアケースであることは言うまでもありません」
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高齢者に限定して恩赦を行うべき?
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