もしもエボラが空気感染したら!? パンデミック映画が現実化する恐怖

 エボラ出血熱が猛威をふるい続けている。

 アメリカでは、看護師2人の二次感染が確認され、スペインで三次感染が疑われる者が現れるなど、全世界に大きな衝撃が走っている。

 これについて10月14日付のロイター通信は、「患者の体液との直接的な接触を防ぐための防護服を着ていたにもかかわらず、なぜ看護師がウイルスに感染したのか首をかしげている」と現地の混乱ぶりを伝え、「ここにきて、エボラウイルスが空気感染型に変異したと心配する声も再び強まっている」と報じている(Celine Gounder『コラム:エボラ感染経路について知っておくべき事実』)。

◆20年前に予見されていた悪夢

 では、空気感染型に変異すると、一体どんな被害が生じるのだろうか。

 そんな恐るべき悪夢がなんと20年近くも前に映像化されていた。

 ダスティン・ホフマン主演のパニック超大作『アウトブレイク』(’95年)だ。

アウトブレイク

『アウトブレイク』('95年)

 映画に登場する架空のウイルス「モターバ・ウイルス」は、何を隠そうエボラウイルスをモデルにしたものなのだ。エボラウイルスと異なる点は、潜伏期間が24時間以内と極端に短いことと、致死率が100%(ちなみに今回西アフリカで流行しているエボラ出血熱の致死率は約7割)であることだ。

 ある日、アフリカ・ザイールのモターバ川近くの村で、エボラウイルスに似た未知の伝染病が確認される。村人ほぼ全員死亡という惨状だったが、隣村まで80kmもあるため感染拡大は考えられなかった。

 しかし、現地をつぶさに見て、不穏なものを感じた米国陸軍伝染病医学研究所(USAMRIID)のサム・ダニエルズ大佐(ダスティン・ホフマン)は、帰国後すぐに上司のフォード准将(モーガン・フリーマン)とCDC(米疾病予防管理センター)に警戒通達を出すよう働きかける。

 だが、どちらも「アメリカに侵入する可能性はゼロに等しい」と首を縦に振らない。そうこうするうち、アメリカの港にアフリカから一匹の猿が違法に持ち込まれる。この猿が殺人ウイルスの宿主という設定で、猿に唾液を浴びせかけられた動物検疫所の従業員や、引っ掻かれたペットショップの店長などが次々と高熱を発して病院に担ぎ込まれる。さらに検査中の血液を誤って浴びた検査技師が映画館で倒れるに及んで、感染は一挙に町レベルにまで広がることとなるのだ。

 なぜか……? 病院職員の咳で飛び出したウイルスが空中に浮遊し、他人の口の中に入り込んだからだ。つまり、空気感染型に変異していたのである(後から従来型と空気感染型の2種類が元々同じ宿主に併存していたことが明らかになる)。

◆唾液の飛沫から感染する!?

 エボラ出血熱をモデルにしているだけに感染者の症状は、実際のビジュアルを反映していて生々しい。感染者は、高熱、激しい頭痛、筋肉痛、嘔吐などの症状に襲われ、最後には目や鼻、口からの外出血または内出血を引き起こし、多臓器不全やショック状態により死に至る。

 数千人が住む田舎町がわずか数日でパニックとなり、宇宙服のような防護服で研究チームが踏み込んでいく様子は、まさに連日のニュース映像そのものである。アメリカでは、今回のエボラ出血熱の相次ぐ二次感染を受け、国内の不安感は増大しているはずだ。

 ここで気になるのは、果たしてエボラウイルスが空気感染するのかどうかということだろう。すでに多くに専門家が指摘しているが、通常感染の形態までが変わるような変異はあり得ないという(※)。

 国立感染症研究所は、エボラ出血熱について「感染したヒトの血液、分泌物、臓器、その他の体液に、創傷のある皮膚や粘膜を介して直接的接触することにより、またはそのような体液で汚染された環境への間接的接触でヒト-ヒト感染が起こる」(同研究所ホームページ、ウイルス第一部/感染症疫学センター)と説明している。

 あくまで体液への直接接触が前提のようだが……。

 しかし、飛沫感染ならどうだろうか。これも色々な情報が出回っているが、患者の血液や排泄物、唾液などの飛沫から感染する可能性は十分あり得るようだ。今年8月、閣議後の記者会見で田村憲久厚生労働大臣(当時)は、エボラ出血熱の飛沫感染について、かなりの飛沫を浴びなければならないと前置きつつも、「飛沫感染というのはもちろん全くしないわけではありません」と否定しなかった。

 インフルエンザ患者の多くが飛沫感染であることはよく知られている。であるなら、空気感染でなくても感染力がそれなりに強ければ、世界的な大流行となっても全然おかしくはない。アメリカを始めとした先進国が恐れている事態はそれだろう。現在でもすでに7か国に飛び火しているのだから。

◆軍隊を動員して町全体を封じ込め

 映画『アウトブレイク』では、政府は軍隊を大量に動員して、住民の自宅待機を強制し、田舎町全体の封じ込めに躍起になる。だが、これが都市部ならどうだろうか。そもそもの封じ込め自体が不可能になるのではないか。

 ’11年公開の『コンテイジョン』は、マット・デイモン、ジュード・ロウら共演のメジャー映画だが、CDC(米疾病予防管理センター)などの情報に基づいた正確なシミュレーションにより、パンデミックに至る様子は息が詰まるほどのリアリティがある。

コンテイジョン

『コンテイジョン』('11)

 アメリカ、ロンドン、東京、香港などで未知の致死性ウイルスが蔓延した場合に、実際に何が起こるのかを誇張を加えずドキュメンタリー並みに淡々と描写している。そして、グローバル化と都市への人口集中が、パンデミックのリスクをいかに大きくしているかがよく分かる内容となっている。まるで今のエボラ・パニックを先取りしたかのようだ。

 WHO(世界保健機関)は、新規感染が12月頃にはおよそ5000人~1万人のオーダーに達する恐れがあるとの警告を発した。この凄まじい感染爆発に疑問を感じる人々が、空気感染やウイルスの突然変異に関するデマに吸い寄せられるのは無理もない話だ。

 事実、サイエンス誌の報告では「研究者らは今回のエボラ流行で既に300以上のウイルス突然変異を発見している。こうした変異がウイルスの感染力を強めていないかの調査を研究者らは急いでいる」(ブルームバーグ10/15付「エボラ、流行長引けばウイルスが変異-感染力が強まる恐れ」)とあり、その懸念が決して的外れではないことを伝えている。

 もう、すでに映画の恐怖は現実となりつつあるのだ……。<文/真鍋 厚>

※世界保健機関(WHO)は、英メディアの一部が、突然変異による空気感染の可能性を報じたことについて「エボラウイルスが空気感染する新種に突然変異する可能性を立証するものはなく、空気を介して流行が広がるとの話は『臆測だ』」(時事ドットコム2014/10/06)と切り捨てている。

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