“サバイバー”に隠されたビンスのある実験――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第117回
ビンスはある実験を試みていた。それは1週間のスパンで2回のPPVをプロデュースした場合、有料視聴契約のリピート率はどれくらいになるかという市場調査だった。
アメリカじゅうの一般家庭が七面鳥のディナーを食べるサンクスギビング・デー(感謝祭)の木曜夜に“サバイバー・シリーズ”を開催したWWEは、それから6日後の12月3日、“テューズデー・イン・テキサス”というタイトルで視聴契約料金14ドル95セントのミニPPVをプロデュースした。メインイベントはいうまでもなく、王座移動が起きたアンダーテイカー対ホーガンのリターンマッチだった。
12・3PPV“テューズデー・イン・テキサス”はテキサス州サンアントニオのフリーマン・コロシアムに8000人の観衆を動員した。この試合では、ホーガンがアンダーテイカーのマネジャーのポール・ベアラーから“骨つぼ”を奪い、これを凶器に使ってアンダーテイカーの額を一撃。“骨つぼ”の灰で目つぶしを食らったアンダーテイカーがフォール負けを喫し、ホーガンが王座奪回に成功した。
“サバイバー・シリース”と“テューズデー・イン・テキサス”は2話完結のドラマになっていた。“サバイバー・シリーズ”はジョー・ルイス・アリーナに1万7500人の大観衆を動員し、PPV視聴契約は28万世帯。
その続編となったミニPPV“テューズデー・イン・テキサス”は視聴料14ドル95セントの低料金設定にもかかわらず視聴契約数は“サバイバー――”の約半数の14万世帯にとどまった。ビンスが想定した“一石二鳥”のシナリオはもくろみどおりにはいかなかった。
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