恋愛・結婚

「女心がわからない…」無垢な青年の愚直な行動が仇になった話【コラムニスト原田まりる】

ひょんな再会でLINE代行を引き受けることに

 しかし、先日SNSを介してN君から連絡があり、数年ぶりに再会を果たした。私たちは「ローゼンメイデン」には触れずに、今期のアニメの感想や近況報告を話す。するとN君の口から思わぬ言葉が飛び出した。 「実は原田さんに相談があって、女心がわからないんだ…」  話を聞くとN君は最近人生初の彼女ができたらしい。しかし、手も繋がないまま3回目のデート以降彼女と音信不通になり、連絡をしても既読無視となるとのこと。 「最後の会話がこうなんだけど…どうしたらいい?」N君はLINEを私に見せる。すると、その彼女のアイコンが目に止まった。彼女のアイコンはアニメ“おそ松さん”のキャラだったのだ。 おそ松さん 彼女はおそ松クラスタなのか。じゃあおそ松さんネタを送ったら食いつくんじゃないか?と私は思った。というのも、おそ松さんは女子向けアニメというイメージが強く、おそ松好きの男子は珍しい存在なので、話が盛り上がると思ったのだ。  N君に伝えると「たしかに。けど僕おそ松さん見てないから、原田さん代わりに送ってほしい…」と“LINE代行”をお願いしてきた。 「じゃあ、『一松好きなの? 僕はチョロ松が好きだよ~! 一松事変最高だったよね』って送ってみようか」と私は指示した。N君はおそ松さんを見ていないので、一切意味がわかっていないが言われた通りの文面を送信する。  すると、3ヶ月間ずっと既読無視していた彼女から「えー☆ おそ松さんみてるの? ドラ松もいいよー!」と瞬速で返信がきた。「原田さん、これは…」N君は困惑していた。その後私はN君の“LINE代行”を続け、最終的に「来月ご飯いこう」という約束まで取り付けることまで出来たのだ。  だが、ここからが問題であった。N君はおそ松さんを一切知らない。彼女に会うまでにおそ松さんを熱く語れるレベルになるまでハマらなければならない。N君は全力で頑張った。本編をみて、イベントの抽選に申し込み、ファミリーマートとおそ松さんのコラボのためにわざわざ僻地のファミマに並び、と次第に立派なおそ松男子に育っていった。そして決戦の日。N君はこの日まで買い集めたおそ松さんグッズを片手に、おそ松さんパーカーを着て彼女と再会するために東京にやってきた。
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愚直さゆえに悲劇再び
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私の体を鞭打つ言葉

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