ニュース

日米欧の経済停滞は「資本主義の限界」なのか?

――バブル崩壊で発生した「失われた20年」、そしてデフレギャップをいまだ日本は解消できていない、と。ところで経済線を見ると、直近はデフレギャップが拡大しているようです。これは何を意味するのでしょうか。 木下:これこそが前編で指摘した「反のバブル」の発生を示しています。きっかけとなったのは前述したように日銀の異次元緩和であり、それを加速させたのがマイナス金利でした。通常、バブルはインフレギャップの拡大により発生します。つまり経済線が極端に上方へ移動することで発生していました。チューリップバブルしかり南海バブルしかり、あるいは日本の不動産バブルやアメリカでリーマンショック前に発生していたバブルしかりです。ところが今回、初めてデフレギャップの発生した「反の経済」の下でバブルが発生しました。 ――ではデフレギャップとは何なのでしょうか。 木下:ひと言でいえば、銀行に滞留したお金です。今はいくら日銀がお金ばらまいても、金利をマイナスにしても、企業は設備投資しないし、消費者も消費しない。だから「供給>需要」の関係は変わりません。新たな需要が生まれていないからです。むしろ、デフレギャップは拡大しているのが現状です ――この状況を救う方策はあるのでしょうか。 木下:ひとつ考えられるのが戦争です。先ほどの「経済線」を今一度見直してください。日本は大正バブルの崩壊後にも「反の経済」へ陥りましたが、戦争によって脱却しています。第2次世界大戦によって京都や奈良、北海道などのごく一部を除く日本全土が空爆を受けました。その結果、日本の供給能力はほぼゼロになるほど壊滅させられました。大正バブル崩壊後、「供給>需要」となりデフレギャップを抱えていたのが、空爆によって「供給<<<需要」へと急転換した。敗戦後、インフレという副作用はあったものの、日本は「正の経済」へと復帰して、高度経済成長を遂げていくのです。 ――では、今の日本が復活する道も戦争である、と? 木下:広島と長崎に落とされた2発の悲惨な原子力爆弾を人類が経験した今、大規模な総力戦である戦争は国際的に許されるものではありません。いくら戦争が資本主義再生の手段として有効だからといって、決して選ぶべきでないことは明らかです。戦争以外にも日本が「反の経済」を脱して発展を遂げる方策もあることはあります。資本主義がダメだからといって、社会主義、共産主義を選択することは愚の骨頂ですから、我々でなんとかして資本主義の限界を突破する方法を模索せねばなりまません。  資本主義の限界を突破する秘策とは……? 次回後編では、新刊『資本主義の限界』の骨子でもある「反のバブル崩壊」について話を聞いた。〈取材・文/高城泰 撮影/岡戸雅樹〉 【木下栄蔵(きのした えいぞう)】 1949年、京都府生まれ。1975年、京都大学大学院工学研究科修了、現在、名城大学都市情報学部教授、工学博士。この間、交通計画、都市計画、意思決定論、サービスサイエンス、マクロ経済学などに関する研究に従事。特に意思決定論において、支配型AHP(Dominant AHP)、一斉法(CCM)を提唱、さらにマクロ経済学における新しい理論(Paradigm)を提唱している。1996年日本オペレーションズリサーチ学会事例研究奨励賞受賞、2001年第6回AHP国際シンポジウムでBest Paper Award受賞、2005年第8 回AHP国際シンポジウムにおいてKeynote SpeechAward受賞、2008年日本オペレーションズリサーチ学会第33回普及賞受賞。2004年4月より2007年3月まで文部科学省科学技術政策研究所客員研究官を兼任。2005年4月より2009年3月まで、および2013年4月より名城大学大学院都市情報学研究科研究科長並びに名城大学都市情報学部学部長を兼任。8月12日に新刊『資本主義の限界』(扶桑社)を発売
1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。編集プロダクション「ミドルマン」所属。株、FX、仮想通貨など投資関係の記事を幅広く執筆。著書に仮想通貨の入門書『ヤバイお金』(扶桑社)、『FXらくらくトレード新入門』(KADOKAWA)など
1
2
資本主義の限界

日本経済が延々と低迷を続ける理由は「たった1本の経済線」で解き明かせる!

おすすめ記事