震災復興には被災地にカジノしかない!?
被災地にカジノを——。こうした声がカジノ推進派の間で、にわかに活気を帯び始めている。
今年、マカオに次ぎ、ラスベガスのカジノ収入を抜くと予測されるシンガポールのカジノ収入は計64億米ドル(約5000億円超)。まさにアジアのカジノ市場は、不況知らず。20兆円とも言われる復興資金を確保するうえで、税収アップにも繋がるカジノ誘致はひとつの選択肢と言えるだろう。
しかし、一向に進展しない日本のカジノ合法化。本当に日本にカジノはできるのか? 海外のカジノマーケティングを数多く手掛け、カジノの裏も表も知り尽くした人気コミック『ジャンケット』の原作者・赤木太陽氏に話を聞いてみた。
Q なぜ日本のカジノ合法化は一向に進まないの?
赤木:石原都知事や大阪の橋下府知事は、本気でカジノ誘致を検討していることからもわかるように、莫大なカジノ収益は経済を支える大きな可能性を秘めています。
ただ、それだけにカジノ利権を獲得しようと、さまざまな人間が画策。合法化へ向けて、一枚岩になっていないのが実情でしょうね。
Q カジノ合法化にはそれほど大きなメリットがあるの?
赤木:よくカジノ施設単体で考える人がいますが、カジノは複合的なエンターテイメント施設。誘致されれば、ホテルやショッピングセンター、展示場などもできる。それに伴い、ディーラーなどの従業員や警備員の雇用創出にも繫がり、予想もつかなかった業種にもカジノ景気が派生するはずです。
Q カジノが日本の景気回復にひと役買うと?
赤木:観光収入はアップし、それに伴って税収もアップする。シンガポールでは、昨年1〜11月までのギャンブル税収が約1243億円(前年比12%増)でした。もし日本がカジノ合法化すれば、パチンコも法整備が進んで正式な公営ギャンブルになる。約20兆円規模の市場からもきちんと税金の徴収ができるようになれば、景気回復だけではなく、破綻寸前の日本財政にもいい方向に働くと期待されています。
Q 『ジャンケット』ではカジノ利権を狙う人間たちが描かれていますが、日本でもカジノ合法化に向けて、動き出している人たちはいるの?
赤木:作品中に登場する人物には、それぞれ実在するモデルがいなくもない。IT業界の大物やパチンコ業界のドン。闇社会の人物なんかも登場し、カジノの裏と表から見た人間模様を描いています。
カジノは巨大利権。嗅覚の鋭い人間が目を付けないわけがありません。細かいところでは玄関先のニットフロアやキャッシュディスペンサー、ディーラーの資格制度も利権化できる。それこそ、中国人富裕層を送り込む香港系のジャンケット(VIP専門のカジノコンシェルジュ)も、日本のカジノ利権獲得に向けて動き出すでしょうね。
Q 「被災地にカジノを」の意見についてはどう思う?
赤木:良い案だとは思いますが、感情論でカジノ誘致場所を決めてはいけません。カジノは誘致が目的ではなく、誘致後の莫大な収益が目的なわけですから。では、誰が日本のカジノに来てくれるのか?
そう考えると、今やターゲットとすべきは、中国人富裕層以外ありません。カジノはジャンケットが扱うVIP層で成り立っている。彼らなくして、カジノの成功は有り得ない。そう考えると、彼らが行きやすい、または行きたい場所に誘致すべきだと思います。
Q どこにカジノを誘致したらいい?
赤木:賭場としてのカジノだけで集客するのは難しいですから、やはり最有力候補は沖縄でしょうね。中国から近く、きれいな海もある。沖縄はリゾート地として中国人セレブたいからの人気も高い。カジノを成功させるには、ギャンブル以外の魅力も必要なんです。
赤木太陽氏
ライター、編集者として活躍し、現在は株式会社マッシュルーム代表。海外カジノの日本マーケティングを手掛けるなど、世界のカジノに精通。マカオの裏社会を描いた近代麻雀オリジナルで人気連載中の『ジャンケット』(竹書房刊)の原作を担当
取材・文/テキサス
ジャンケット 1 (近代麻雀コミックス)
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