“ロイヤルランブル”ブレット・ハートの憂うつ――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第210回(1996年編)
しかし、じっさいにはこの試合のあとにダブル・メインイベントとして“ヒットマン”ブレット・ハート対アンダーテイカーのWWE世界ヘビー級選手権(第5試合)がラインナップされていた。どうやら、ショーンは確信犯的にそのあとにつづくタイトルマッチのムードをスポイルした。
ショーンとともに“ロイヤルランブル”で最後の最後まで生き残ったディーゼル(ケビン・ナッシュ)は、退場のさいに入場ゲート付近でアンダーテイカーと一触即発の神経戦を演じた。このシーンはこれからはじまるタイトルマッチの最後の数分間の“予告編”になっていた。
ブレット対アンダーテイカーのタイトルマッチは、ベビーフェースとベビーフェースの闘いというめずらしい図式がキー・ポイントになっていて、観客は試合のなかのひとつひとつの局面ごとにブレットとアンダーテイカーの両選手に声援とブーイングを交互にぶつけた。
試合は28分31秒、アンダーテイカーが十八番ツームストーン・パイルドライバーでブレットを脳天からキャンバスに落とした瞬間、乱入してきたディーゼルがリングサイドからレフェリーの足を引っぱってカウントを妨害。場外にひきずり落とされたレフェリーはその場で試合終了のゴングを要請し、ブレットの反則勝ちをコールした。
1月恒例のスーパーショー“ロイヤルランブル”の大トリにレイアウトされたタイトルマッチは、いつのまにかディーゼルとアンダーテイカーの因縁ドラマのプロローグに“変換”されていた。試合終了後、ディーゼルとアンダーテイカーの番外戦の乱闘に観客の視線が集中してしまった分、チャンピオンのブレットは損な役まわりを演じることになった。
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