『君の名は。』も受賞。シッチェス映画祭受賞作『ハードコア・ヘンリー』は“正視できない”衝撃作
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物語は主人公ヘンリーがサイボーグ化した体で目を覚まして始まり、敵を蹴散らして終わるのだが、我われは最後までヘンリーの顔がわからない。見ているのは彼の視点だから鏡を見ない限り顔は映らないのだ。もっとも、顔などどうでもよろしい。ストーリーも平凡である。この作品で凄いのは、見ているこちらの酩酊感である。
手振れのあるPOVはもともと映像酔いしやすい。だが、もし主人公の目の位置にカメラがあり、しかもサイボーグだから20メートルくらいジャンプしたり落下したりは平気で、敵もサイボーグで散々殴ったり殴り返されたりしないと倒せないとどうなるか? あなたが目にするのはブレにブレた、急落下、急上昇、急バック、急停止、激突、空中回転ありのレールのないジェットコースターに乗っているかごとき映像である。ピンと来ない人は、予告編の動画が上がっているので見てほしい。上映時間96分間の9割ほどをこんな感じのノンストップアクションが占めている。
飛び降りる時の口の方へはらわたがせり上がって来る不快感……。振り向き様に殴られて脳震盪寸前の衝撃というのはあんなふうなのか……。鑑賞しているというより搭乗している感じで臨場感抜群、スピード感も映画では味わったことがないほどだが、これで酔わないわけがない。いくつかのシーンで私は目を背けざるを得なかった。
見たいのに正視できない『ハードコア・ヘンリー』。みなさんにもぜひ体験してもらいたいが、日本で上映してくれないものだろうか?
文/木村浩嗣(ナノ・アソシエーション)
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