黒田と大谷がマウンドと打席で魅せた“会話”――黒田・大谷の8球、ダル・マエケンの10球「輪廻する肉体言語」
黒田・大谷という新旧大スター対決。試合前、栗山監督はこのふたりを「千代の富士と貴花田の戦い」と表現していた。そのニュースターを打ち取ったレジェンドの肉体は、まさに「体力の限界」。5回3分の2、85球を投げ終えた黒田は静かに、そして雄々しく自軍ベンチに帰っていった。そして彼が再びマウンドに上がる機会は訪れなかった。
20億を蹴って広島に戻ってきた男が、近い将来20億・30億を稼ぐであろう若武者に、自身の引退を賭け、何を伝えたかったのか。黒田が多く語ることは、試合後やはりなかった。
この黒田―大谷という対決を観た筆者は、強い既視感に襲われた。この図式、どこかで観たことがあるぞ……。それは10年の交流戦、同じくファイターズとカープの一戦、ダルビッシュとマエケンで交わされた“会話”だった。
もはやパ・リーグの大エースとなっていたダルビッシュに、セを代表するピッチャーに成長したマエケン。この試合でダルビッシュはバッター・マエケンと3度対戦。このマッチアップのなかでほぼ全球種を披露し、10球を投げている。いくら打撃がいいマエケン相手でもダルビッシュほどのピッチャーが全球種を放る必要はない。試合後、ダルビッシュはこう語っている。
「向こうも興味あると思うので、いろいろな球を投げた」
マエケンを次を担う球界のエースと見染めたダルビッシュが無言で放った、10球のメッセージ。その翌年のオフ、ダルビッシュはメジャー行きを宣言。遅れること4年、マエケンはメジャーへと旅立った。
そんな大エース・マエケンを欠いたカープに、今度は黒田という侍がアメリカから帰還。そしてその年の日本シリーズで、二刀流という異次元の活躍を見せる大谷と黒田が、マウンドと打席で魅せた“会話”。
スポーツとは「線路はつづくよ、どこまでも」。ダルビッシュ・マエケンの10球は、黒田・大谷の8球として輪廻したのだ。我々凡人の理解を超えたところで交わされる、超人たちの肉体言語。これら声なきメッセージに、我らファンは魅了されてならないのだ。
【村橋ゴロー】
1972年生まれ。ほとんどの家事とまあまあの育児をこなす、自宅防衛系ライター・コラムニスト。千原ジュニアや田村淳など芸人連載の構成を手掛ける。近著に『俺たち妊活部「パパになりたい!」男たち101人の本音』(主婦の友社刊)がある。Twitterは、@muragoro
―[村橋ゴロー]―
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