更新日:2022年08月14日 11:04
エンタメ

『ママゴト』のツンデレ美人ママに転がされたい!――南信長のマンガ酒場(2杯目)

 マンガの中で登場人物たちがうまそうに酒を飲むシーンを見て、「一緒に飲みたい!」と思ったことのある人は少なくないだろう。『まんが道』のチューダーのように一度は飲んでみたい酒、『あぶさん』の「大虎」のように一度は行ってみたい酒場もある。酒の嗜好がキャラの特徴となっているケースも多々あるし、酒を酌み交わすことで親子や仲間の絆を深めたり、酔っぱらって大失敗、酔った勢いで告白(あるいはベッドイン)など、ドラマの小道具としても酒が果たす役割は大きい。  当コラムでは、そんなマンガの中の印象的な“酒のシーン”をピックアップし、そのシーンと作品の魅力について語る。酒好きな方はもちろん、そうでない方も、酒とマンガのおいしい関係に酔いしれていただきたい。  今回ご紹介するのは、安藤サクラ主演でドラマ化もされた話題作だ。

【2杯目】松田洋子『ママゴト』◎ツンデレ美人ママに転がされたい!

 ひと口に酒場といってもいろいろあるが、なかでも不思議なのがスナックである。割烹や小料理屋のようにおいしい料理や酒が売りというわけではない。居酒屋のように手頃な値段で飲み食いできるわけでもない。オーセンティックなバーのように珍しい酒や落ち着いた雰囲気を味わえることもない。もちろんおいしい手料理を出す店もあるにはあるが、スナックでは基本的に料理や酒に期待しちゃいけない。スナック最大の売りは、何といってもママのキャラなのである。  松田洋子が描く『ママゴト』の主人公・映子が切り盛りする店「アムール」も、そんな場末のスナックだ。近所のコリアンバーのオモニのメシがうまいと言う客に「夜の世界で『家庭』を求める男はつまらんでー」と言いながらダバダバと酒を注ぎ、「うちは酒以外 かわきもんしか置きたぁないんよ」「メシで男釣るて邪道じゃろ」と豪語する映子。じゃあ何で釣るかというと、ズバリ“女の色気”である。  ドラマ版では安藤サクラが演じた映子ママだが、原作では若い頃の夏木マリみたいなグラマラス美女。胸の谷間もあらわに「ポッキー食びゅう?」と迫られたら、そりゃ「食びゅう(ハート)」と答えるしかないだろう【図1】
図1「ママゴト」1巻p18

【図1】『ママゴト』1巻P18より。(c)松田洋子/KADOKAWA刊

 ただし、色気で釣るといっても客に媚びるわけじゃない。店の中での映子ママは自由気ままな女王様。カラオケのデュエットを断り、「うちゃあ誰とでもデュエットするような軽い女じゃないんよ」「男女交際ABCの次がDuetじゃけ」とうそぶく。客に一杯おごって「あっち(別の客)の伝票につけとくけ」と言えば、客のほうが「じゃあわしからママにおごるで」「俺もおごらせてママー」とくる。誕生日には花が大量に届き、プレゼント持参の客が大集合。むしろ客のほうが彼女のご機嫌をとるのに一生懸命なのである。  そうかと思うと、アラフォー独身の彼女に「さみしゅうないか――」と聞く客に「毎日でも福さんが店に来りゃ さみしゅうないわ――」と返して喜ばせ、ある人物をディスった客には「この店で人の悪口を言うてええんはうちだけなんよ」と叱ってシュンとさせたところで「おりこうさん」と頭なでなで。「最近ママおっそろしい技使うけえ いけんわー」というオッサン転がしの技には、罠と知りつつ引っかかりたくなる。
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気持ちひとつで酒の味わいも変わる
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ママゴト 1

「普通の家族」を夢みるものたちの、おかしくて、そして切ない、ある奇跡への物語。


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