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「日ペンの美子ちゃん」に大先輩がいた!? その名は「養命酒のメイ子ちゃん」!

 ペン習字通信講座の広告でおなじみ「日ペンの美子ちゃん」。現在は6代目美子ちゃんのマンガ(作/服部昇大)がツイッターで毎週更新され、時事ネタ絡みの攻めた内容にネット民がざわつくこともあるほどの人気キャラである。初登場は72年というから立派なアラフィフだが、設定上は「永遠の17歳」。押しも押されもせぬ広告マンガの女王だ。
 しかし、美子ちゃん誕生より20年近く前の55年に、すでに広告マンガのアイドル的キャラが存在したのをご存じだろうか。

美子ちゃんに先輩が!

 その名は「メイ子ちゃん」。養命酒の広告なので「養命酒のメイ子ちゃん」ということになる。祖父母の家に養命酒を届けたり、道端で倒れている人を養命酒で助けたりと大活躍のメイ子ちゃん。マンガの構成や全体の雰囲気など、「日ペンの美子ちゃん」にそっくりだ【図1】。というか、こちらのほうが断然早いので、美子ちゃんにとっては大先輩に当たる。
「なかよし」1955年

【図1】左・『なかよし』(講談社)55年11月号、右・同12月号より。

 こんな時代から独自のキャラクターを立てた広告マンガがあったことに驚く。しかも、載っていた雑誌にまたびっくり。筆者が古い雑誌を調べていてたまたま発見したのだが、なんと少女マンガ誌『なかよし』なのである。  なぜ養命酒の広告を少女マンガ誌に? マンガの中では小学生のメイ子ちゃんも祖父母や両親と一緒に養命酒を飲んでるみたいだけど、当時は子供が飲んでもよかったの? いろいろ不思議な気がしたので、製造・販売元の養命酒製造に話を聞いてみた。 「弊社に残っている資料の中に、50~51年(昭和25~26年)頃、多くの雑誌に広告を出稿した記録があります。いくつか例を挙げますと『面白倶楽部』『オール読切』『講談倶楽部』『探偵実話』『探偵クラブ』『婦人世界』『主婦の友』『主婦と生活』『平凡』『キング』『少年クラブ』などですね。『なかよし』に掲載されたものもそのひとつかと思われます」(同社マーケティング部・結城雅史さん/以下同)  そんなにいろんな雑誌に広告を出していたとは、これまたびっくり。『なかよし』は55年創刊だから、創刊早々に出広したわけだ。 「当時、少年誌・少女誌には、いわゆるコマ割りのマンガの体裁で、幾種類もの子供のキャラクターを使い、自分たちのお父さんやお母さん、お祖父さん、お祖母さん、受験勉強のお姉さん、サラリーマンで働くお兄さんたちに養命酒を推奨する内容の広告を掲載していました。親孝行の子供が親に養命酒を勧めるという内容が多かったようです。メイ子ちゃんは、その子供キャラクターの一人かと思われます。キャラクターについては、その時代のニーズに合わせて、忍者ブームが起きたときには、忍者をキャラクターにするなど、当時の広告制作者が創意工夫を凝らしていました。子供向け雑誌に出稿していた期間は、50年~75年頃までかと思われます」

養命酒の広告、なぜ子供雑誌に?

 養命酒のような商品の広告を、なぜ子供向け雑誌に? 「戦後まもなくは、物資が乏しく、国民全体が栄養状態の悪い状況が続いていました。当時、最も滋養強壮を必要としていたのは、病弱で学校を休みがちな子供たちで、養命酒を飲用することで虚弱体質を改善し、元気で健康に過ごせることを広告で訴求していました。併せて、子供だけではなく、ご家族みんなで一緒に養命酒を飲むことも企図していました。ただ、内容的にも子供が親に養命酒を勧めるという構成が大部分を占めることから、やはり大元の狙いは子供ではなく、飲用者の大半を占める大人を対象にしていたかと思われます」  まあ、子供がおこづかいで養命酒を買うわけないですもんね……と思ったら、同社に資料として残っていた『少年サンデー』掲載の「お父さんを丈夫にした秀一くんと英二くん」では、胃腸の弱いお父さんのために兄弟がおこづかいを出し合って養命酒を買っているではないか【図2】。なんて親孝行な子供たち!
図2_「少年サンデー」1967年

【図2】『週刊少年サンデー』(小学館)67年4月16日号より

 ちなみに、マンガの中ではメイ子ちゃんやその他の子供たちも養命酒を飲んでいるようですが、当時は子供が飲んでもいいものだったのでしょうか? 「戦後の一時期、虚弱体質の子供向けの滋養強壮剤としても普及していました。ただ当時も、『養命酒』と酒の文字が入ることから、また医薬品であることから、子供を広告に掲出する際は必ず親と一緒に登場させたり、親に養命酒を勧める体裁をとったりと、当時の広告制作者も工夫を凝らしていたようです。なお、未成年の服用については、食生活の向上による虚弱児童の減少と飲酒に対する意識の変化を踏まえ、現在は推奨しておらず、かつて小児にも設定されていた用法・用量も近年は成人のみとしており、20歳未満の服用は控えていただいている次第です」  実は同社は、13年に『ゴルゴ13』とのコラボも実施している【図3】。
図3_ゴルゴ13

【図3】電車のドアステッカー広告。ほかにもポスターや新聞広告など多様なバージョンあり

 戦後すぐの時代から現在まで、マンガを使った広告を積極的に打っている養命酒。今度はどんなマンガとコラボするのか、それとも「メイ子ちゃん」みたいなオリジナルのキャラを打ち出すのか。マンガ好きの疲れ気味中年としては楽しみだ。 (取材・文/南信長)
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