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『相談役 島耕作』『結婚アフロ田中』漫画はコロナ禍の時代をどう描くか

 緊急事態宣言こそ解除されたものの、まだまだ予断を許さぬ状況に変わりはない。と、いきなり書いても新型コロナの話であることは通じるだろう。街を歩けば、9割以上の人がマスクをしているのも、今や当たり前の光景だ。営業再開したお店でも、さまざまな感染防止策が取られている。企業によってはリモート勤務をそのまま継続するところもあるという。新型コロナによって、いろんな常識が変わってしまった。

『ゴルゴ13』は3密を避けて初の休載

ビッグコミック

『ビッグコミック』連載の『ゴルゴ13』(さいとう・たかを)は52年の歴史のなかで初めて休載することになった

 そんななか、漫画家たちも難しい判断を迫られた。ひとつは仕事環境について。何人ものスタッフが机を並べて仕事をする状況は、いわゆる「3密」に相当する。そこでの感染拡大リスクを避けるため、『ビッグコミック』連載の『ゴルゴ13』(さいとう・たかを)は52年の歴史のなかで初めて休載という措置を取った。  また、これを機会にアナログからデジタル作画に切り替えた作家も少なくない。デジタルであれば、スタッフを一堂に集めなくてもリモートで作業してもらうことができるからだ。『重版出来!』『月刊!スピリッツ』連載)の松田奈緒子も、その一人。急な切り替えで慣れない作業に苦労しつつも「アシスタントさんのほうがデジタルに詳しいので、赤子のように世話してもらいながら、何とか完成にこぎつけました」と苦笑する。  そしてもうひとつの悩みどころは、作中に新型コロナを持ち込むかどうかの判断だ。長期のストーリー連載であれば、作中の時間と現実の時間の流れが違うので、そこにいきなり新型コロナが蔓延したら逆に不自然になる。異世界ものや時代ものなら、悩む必要もない。しかし、ある程度、現実社会とリンクしている作品の場合、どうするか。「ないことにする」という判断ももちろんありだ。実際、多くの作品はそちらを選択している。ストーリー上の都合もあるし、キャラ全員がマスクを着けた状態では画面的に映えないことこのうえない。が、あえて「新型コロナのある世界」を描く作品も出てきている。

島耕作はマスク姿で登場し話題に

 新聞4コマやエッセイマンガ以外で、いち早く取り入れたのは『相談役 島耕作』(弘兼憲史)だ。『モーニング』20号(4月16日発売)掲載回で、島耕作がマスク姿で登場し、ネットでも話題となった。しかし、「私も72歳の高齢者だから新型コロナウイルスには敏感にならないと……」というマスク着用の意味を勘違いしているようなセリフや、国分会長の部屋に入った途端にマスクを外して至近距離で会談する姿にツッコミも。その後、ガラガラの新幹線で岩手県に出張、知事や商工会議所会頭と面談のあと、わんこそばを食べるという、今見るとちょっとどうかと感じる行動が続く。もっとも、執筆時点ではそこまで深刻に捉えられていなかったと思われるし、やむをえない面はあろう。ただ、緊急事態宣言真っただ中で描かれたはずの25号(5月21日発売)では大人数での料亭での会食が描かれており、取締役会でも誰もマスクをしていないのはいかがなものか。  同じ『モーニング』の『OL進化論』(秋月りす)も20号でマスクネタが登場。以降、在宅勤務、リモート会議、学校の休校、飲食店のテイクアウト営業など、新型コロナのある日常が当たり前のように描かれる。在宅ワークが始まるなら「うちのネット環境悪くてー いきなり切れることがあるんです」と最初に言っといたほうがいいとアドバイスされ、「なんで?」といぶかしげだったサラリーマンが、後日「あれ助かったよ 上司が毎日リモート飲み会やりたがるからさー」と感謝するネタは秀逸だった。
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リモート飲み会を大胆な手法で描いた『結婚アフロ田中』
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