「同じ時間を過ごすことが仲間の証明」という日本文化と、過労死の問題【鴻上尚史】
先週、おごってもらったら、日本人は次の週に「先週はごちそうさまでした」と言います。欧米の文化では、「わざわざ言うってことは、またおごってもらいたいということなのか」と考えます。
先週のことをお礼するのは、あなたと私は先週から同じ時間を過ごしていると考えるからです。その延長線上でお礼を言うのです。
欧米では、あなたと私の時間は別々です。先週、私はあなたにおごったが、今週は私は私、あなたはあなたの時間が流れているのです。なのに、わざわざ、「先週はごちそうさまでした」と言うということは、また、同じ時間に戻したいということなのかと思われるのです。
「ひとつよろしくお願いします」とか「これからよろしくです」とかは、基本的に英語に翻訳することが不可能な文章です。
もちろん、通訳の人は、「あなたと仕事ができることが嬉しい」とか「いい結果が出ることを希望します」とか、英語文脈に変換しますが、日本人が意図している「これからずっと、うまくやれるといいですね」という「あなたと私に素敵な同じ時間が流れますように」というニュアンスとは違います。
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