AIに奪われない仕事――連続投資小説「おかねのかみさま」
23:10 蒲田 スナック座礁
村「へっくし」
マ「あら村ちゃん、風邪?」
村「いや、だいじょぶ」
マ「気をつけてよー。もう若くないんだから。コールセンターのお仕事で風邪ひいて声でなくなったら商売あがったりじゃない」
村「だな。オレの声は落ち着くって言ってくれるジイさんもいるからな。最初はプリプリ怒ってても、だんだん話していくうちに【息子を思い出す】とか言ってよ。最後はまたいつでもかけてきてくださいねーって感じで切るんだよ。俺もうれしいし爺さんもうれしい。この仕事やっててよかったなーって思える数少ない瞬間だ」
学「いい話しじゃ。もう何年目になる?」
村「出版社やめて、1年ふらついてたから、今年で3年目だな。俺、接客とか苦手だから、逆に決まってる言葉言うだけの仕事はラクなんだよ。性に合う」
マ「昔から接客苦手だったの?」
村「いやどうかなー。昔は人間が好きだったよ。でも最近の接客ってお客のほうが恐ろしく偉そうにするから、人間扱いされないだろ。前はそれなりに会話があったり、お客の顔覚えたり、楽しくできる瞬間もあったんだけど、ほら、あそこのファミレスだってこの時間1人でやってるじゃん。ファミレスだぜ。キッチンが1人接客が1人。いつ行っても同じおばさんがやってるんだけど、殺人鬼みたいな顔して水運んでるよ」
学「こんな顔か」
村「いや、それは腹痛の顔だ」
マ「確かにむらちゃんがファミレスにいたら引くわ」
村「俺もやだよ。だから決まったことやって決まった時間に帰れるいまの仕事でほんとによかったっておもってる。アホ大学でコイツに教わってたときなんかどんな未来があるか考えたこともなかったけど、結局よかったよ。人間、なんとかなるもんだな…」
次号へつづく
【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。
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井戸実氏とともに運営している起業塾
〈イラスト/松原ひろみ〉
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